夢のマラソン

09年箱根駅伝を観て(中)

東洋大が初の総合優勝を果たした。5区の山登りで柏原が区間記録を大幅に更新して往路で1位に立ち、復路も制した。大学の練習拠点が私の住む川越市内のキャンパスにあって、地域住民の一人としても、望外の喜びである。

東洋大は、ここ数年徐々に力をつけ、特に08年は関東インカレ1万mで柏原が優勝するなどトラック競技でも上位に入る選手が増えた。1万mの平均タイムが出場校トップで、29分を切る選手が20人以上いるという。層の厚さが、優勝の原動力になったことは間違いない。

しかし、東洋大の優勝を予想した人はそれほど多くないと思う。優勝争いに加わる力はついたが、前回優勝の駒大や早大には及ばないのではないか。そして、昨年末部員の不祥事に川嶋監督が引責辞任し、5日間の活動自粛もあった。大会では組織だった応援や、幟などをたてることも禁止された。そんな中で、選手たちはどこまで実力を発揮することができるだろうか、と。私は、最悪でも9位以内のシード権だけは確保してほしい、と願っていた。

世界経済の混迷を「100年に一度の津波」と評したのはグリーンスパン前米連邦準備制度理事会議長だが、年明け早々新聞紙面をにぎわしたのは経済危機をいかに乗り越えるかという話題だった。東洋大チームにとっても予想外の激震だったに違いない。この危機を、一人のブレーキもなく、10人の力走で見事に吹っ切ったのは見事というほかない。

対照的だったのは、優勝候補の筆頭にあげられていた駒大がまさかの失速で13位。前回優勝校のシード落ちは、途中棄権を除けば初めてだそうだ。駒大の脱落で、復路での逆転は堅いのではないかと見られていた早大も、すぐ手の届くところまで引き寄せたものの、2位に甘んじた。予選会をトップ通過した城西大は、8区で途中棄権した。

3年前に、優勝候補の順大がトップを行く8区でブレーキをおこし、亜大の初優勝をもたらしたことは記憶に新しい。プレッシャーに押しつぶされて失速した選手たちを、これまで数多く見てきた。期待されたチームが、期待通りの成果を上げることがいかに難しいかを示している、といえるだろう。それに引き替え、危機に遭遇した東洋大は、プレッシャーからは遠いところにおかれていた。危機をバネとして、沿道からの応援をもらいながら、ある意味ではのびのびと走ることができたように思う。

今、日本は男子マラソンだけでなく、社会の様々な分野で赤信号が点っている。赤信号では止まるだけでなく、うまく方向を変えて追い風を利用したいものだ。この正月は東洋大の活躍で、いい初夢を見せていただいたと思っている。
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by hasiru123 | 2009-01-11 19:29 | 駅伝
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