男女マラソンに見る集団形成の違い

「マラソンは孤独なスポーツである」と言われることが多い。はたしてそうだろうか。同じ道を同じ目的をもったランナーが走るのだから、走る仲間は皆友達だと思えば決して一人ではないと、マラソンを楽しむ立場から山地啓司さんはその著書『マラソンウォッチング』に書いている。

同書では、マラソンをより楽しく観戦するために、ランナーの集団の構造について多くページを割いている。「集団は、無秩序な競争的過程だけでなく、相互補足的な秩序ある集団である・・・無益な競争を避け共同することによって、合目的的に目標に到達する一手段」だとある。そして、プラス面だけではなく、マイナス面もあって、多くのランナーは集団内にいることのプラス・マイナスの両面を測りながらレースに臨んでいる。

3月1日のびわ湖毎日マラソンに続いて、今日(8日)は名古屋国際女子マラソンが行われた。いずれも、8月の世界選手権(ベルリン)代表選考会を兼ねていて、外国から招待選手が参加している。『マラソンウォッチング』を読んで、集団形成について男女間にどのような違いがあるのかに関心が及んだ。この二つのマラソンから読み取ってみたい。

それぞれのレースにおける5キロごとの集団規模の推移は以下のとおりである。数値は選手数で、カッコ内は国内選手数を示す。

     びわ湖毎日(男子) 名古屋国際(女子)
 5キロ   39(34)    17(13)
10キロ   33(28)     4 (2)
15キロ   25(20)     3 (2)
20キロ   24(19)     4 (2)
25キロ   12 (4)     4 (2)
30キロ    5 (1)     1 (1)
35キロ    5 (1)     1 (1)
40キロ    3 (0)     1 (1)

いずれも距離を刻むにしたがって集団が小さくなるのは同じだが、男子は25キロ地点まで10人以上で集団を形成しているのに対して、女子は5キロで17人いた集団が、10キロですでに4人に絞られている(15キロで3人が20キロで4人に増えたのは、一度集団から離れた藤永佳子(資生堂)が再び追いついたため)。30キロからは新谷仁美(豊田自動織機)がトップとなり、終盤で藤永が力尽きた新谷をかわしてトップに出た。

二つの大会を見る限り、男子の方が集団規模が大きく、終盤まで形成される。それに対して女子は、早い時期に集団が崩れ、少人数での競争またはトップ選手の一人旅となるというパターンだ。女子マラソンは、東京国際女子が初めて開催された30年前から、この傾向は変わらないように思える。女子マラソンの黎明期においては、選手層が薄く、選手間の走力の差があることからそのようなレース展開になるのはうなずけるが、女子のマラソン選手が増えて、力の差が接近してきた現在もこの傾向が続くのには、性差による何らかの変数の違いが起因しているのではないだろうか。

ただし、昨年の北京五輪では、男子が20キロまでにトップ集団が早くも5人のアフリカ勢に絞られ、以降少数でのサバイバルレースが展開され、37キロ手前でワンジル(ケニア)がスパートして金メダルを射止めた。女子は、20キロ過ぎからトメスク(ルーマニア)が先頭集団を抜け出し、そのままゴールまで駆け抜けてしまった。両方とも、集団による駆け引きといえるものはほとんど見ることができなかった。男子が女子の集団形成パターンに近くなったともいえる結果だった。

女子マラソンは30年を超える歴史を持ち、過去の記録の蓄積が豊富になった。男女間における集団形成の比較が、データに基づいて詳細に行える。さらに、映像情報も加えて分析してみてはどうだろうか。
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by hasiru123 | 2009-03-08 22:28 | マラソン