昆虫/4億年の旅

昆虫4億年の旅

今森 光彦 / 新潮社


時々スポーツを素材にした写真を撮ることがある。ランナーなど動いている被写体をレンズに捉えるのは難しい。そして、競技者の表情を的確に捉えるのはさらに難しい。レンズを向けながら、シャッターチャンスが訪れるのをじっと待つ。時には、突然予想しなかったシーンが向こうからやってくることもある。

そんなチャンスをうまくレンズに収めた時の喜びは、スポーツ写真に限らない。自然をテーマにした写真でも同じことがいえるような気がする。「里山」という視点から自然に目を向けて、生き物の素晴らしさや命の重さを感じさせる写真展を見た。連休中の新聞に「昆虫 4億年の旅」が土門拳賞を受賞したと報じられていた。30年にわたって熱帯雨林や砂漠など、世界中の昆虫を求めて取材した作品群である。作者は大津市在住の今森光彦さん。

早速、銀座ニコンサロンで開催されている受賞記念作品展に足を運んできた。世界各地の自然に入り込んで見つけた昆虫歳時記である。マクロレンズを通した虫たちの生活が見事に描写されている。たとえば、体を扁平にして、葉の上にべったりと密着して隠れる「ヒラタツユムシ」や、羽ばたきながらアングラエクム・セスキペダレに長い口吻(こうふん)を入れる「キサントペンスズメガと彗星ラン」の映像は幻想的だ。可憐な天使が、現地の子供によって捕えられた「オオアカエリトリバネアゲハと少年」は、新潮社から出された写真集の表紙にもなっている(写真)。また、ガラスのように半透明な翅(はね)を立てて震わせながら「石の隙間で鳴くスズムシ」も素晴らしい。

今森さんが、昆虫をテーマに30年という膨大な時間をかけて追いかけてきた足跡の、一部をのぞくことができた。自分が競技者を追うときの気持ちを思い出しながら、作品を楽しんだ。 
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by hasiru123 | 2009-05-10 19:20 | その他  

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