2009年 09月 20日
日本が世界に追いつく日
これまでの大リーグは、ベーブ・ルースに代表される本塁打を中心としたパワーに注目が集まっていた。ところが最近、筋肉増強系の薬物疑惑でそのパワー野球が揺れている。そんな中で、パワーとは対極の技術によるイチローの安打に光が当てられるようになった。
イチローは誰よりも早く球場入りして、ストレッチをはじめ体調のセルフコントロールに努めたと聞く。とてつもない快挙のベースにあるものは高い自己管理能力だったと知ると、Fan Runが身上の市民ランナーとしても思わず背筋を伸ばしたくなる。
日本の男子マラソンのこれからを考えるとき、イチローの偉業は示唆に富む。世界のトップは2時間3分から4分台が目白押しで、名実ともにスピードの時代に突入している。1万メートルのスピードが26分台でないと太刀打ちできないといわれている。27分台後半がやっとという日本人選手は、世界の潮流から大きく後れをとっている。
しかし、マラソンは1万メートルの4倍強の距離がある。単純に1万メートルの記録から傾向線を引けない理由がそこにある。身体資源の限界や気象コンディション、心理上の問題、戦略、そして勝負勘など様々な要素が勝敗の行方を左右するからだ。これらは、経験から学ぶ「技術」といっていいだろう。過去に多くの優れたマラソンランナーを輩出した日本なら、十分に期待できる。
つまり、スピードはマラソンを走るための重要な土台ではあるが、それだけではないということだと。持てるスピードを生かすための諸条件をクリアして初めて、勝利につながる。また、スピードがやや劣っていたとしても、諸条件の歯車がうまくかみ合えば、好結果が期待できよう。もちろん、トラック競技をさらにメジャーなものに育て、中長距離に取り組む選手の層を厚くしていくことも大切だ。
日本のマラソンが、世界のスピードに追いつく可能性はけっして小さくない。「メジャーの歴史を追い、光を当てた」イチローの活躍に触発されて、こんなことを考えた。