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新人の登竜門

1978年の別府大分毎日マラソンでは、宋茂(旭化成)はスタートから積極的に先頭に立ち、当時としては驚異的といえる5キロ14分台のペースを刻んだ。40キロまで当時の世界最高記録(デレク・クレイトン:2時間8分34秒)のペースを上回ったが、後半の別府湾からの強風によりややペースダウン。世界記録の偉業は阻まれた。結果としては世界歴代2位の2時間09分05秒6で優勝し、日本人では初のサブテン(2時間10分以内)であった。このレースをきっかけに、それまで続いた日本マラソン界は低迷を脱し、宋兄弟を始め瀬古、中山、谷口といった世界をリードするマラソン選手を輩出した。

宋茂はこの2か月前の福岡国際マラソンで、54位と惨敗している。これまでも期待されながらなかなか結果を出せないでいたところにこの不振。2か月という短い調整期間でレースに臨んだことからも、この大会に賭ける意気込みかがえる。産みの苦しみを乗り越えての日本記録の誕生については、私の別大毎日マラソンの記憶として深く刻み込まれている。

さて、今年も新人の登竜門といわれる別大毎日マラソンに多くの新人選手が参加した。特に注目したのは、三津谷祐(トヨタ自動車九州)だ。2005年と2007年の世界選手権1万メートル代表で、日本歴代4位の記録を持つ屈指のスピードランナーだ。残念ながら、32キロ過ぎに失速し、9位に終わった。それでも、大崩れしないところに大器の片鱗をのぞかせていた。まずは、スタミナ不足の克服が課題だろう。

もう一人の注目株は、堺晃一(富士通)。元日の全日本実業団対抗駅伝で、エース区間の4区で区間2位に入って、その存在を知った。3回目のフルマラソンである。

そんな中で結果を出したのは、一般参加でマラソン初挑戦の井川重史(大塚製薬)だった。2時間11分4秒で日本勢最高の4位と健闘した。正直なところ、井川のことは直前の毎日新聞を読むまで知らなかった。終盤に何度か仕掛けて、最後まで優勝争いに参加したことは大いに評価したい。記録は別としても、仮に五輪や世界陸上の切符がかかった大会であったなら、当確をつけたいところだ。これらのフレッシュランナーの来シーズンの走りに期待したい。
by hasiru123 | 2010-02-07 22:46 | マラソン