「インビクタス/負けざる者たち」を観る

バンクーバー冬季五輪がたけなわで、応援に熱が入る毎日である。

必ず金メダルを取ると公言する選手がいれば、静かな闘志を燃やす選手もいる。応援する側から見れば、勝ってほしいけれど、それよりも全力を尽くしていい戦いをしてほしい、感動をあたえてほしい。正直なところ、勝負は「天命を待つ」という気分の方が、私の場合は強い。

一方で、競技に勝つことで、アパルトヘイトによる人種差別や経済格差の残る国をまとめあげる政治的役割を担おうと期待をかけるスポーツもあった。ネルソン・マンデラ大統領就任の翌95年に南アフリカで開催されたラグビー・ワールドカップのことだ。わずか1年で同国代表が優勝するまでの出来事にすぎない。マンデラと、同国のラグビー代表チームのキャプテンとの人種を越えた友情を描いた「インビクタス/負けざる者たち」を観た。

あらゆる政策に優先してラグビー強化に乗り出し、ボクスの主将フランソワ・ピナールを官邸に招き、黒人と白人の架け橋となることを依頼する。ボクスのメンバーも少しずつ考えを改め、単なるラグビーチームではなく政治的役割を担っていることを自覚するようになる。結果として、大方の予想を覆して、ワールドカップの決勝では、強豪のニュージーランド代表オールブラックスを破って優勝を飾る。

ただそれだけのサクセスストーリーだ。その後の南アの再建が必ずしも順調でないことがあるにしても、ドラマを美談にとどめずに、スポーツが人の心を動かす可能性にまで高めたのは、クリント・イーストウッド監督の力量によるところが大きい。1992年の「敗れざる者」も忘れ難いが、この作品は間違いなく彼の代表的な作品になるだろう。そう思いたくなるほどの出色の出来である。

最後の20分間は、ラグビーの熱闘で「和解のための戦い」じっくりと見せてくれた。肩の力を抜いた演出が奏功していて、スタンドで手に汗を握る観戦をしていたかのような思いに浸った。
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by hasiru123 | 2010-02-21 22:24 | その他