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マラソンパフォーマンス向上のためのクロストレーニングの実践事例

今年で4回目を迎えた東京マラソン。5時間以上で完走した人の割合は47.5%だった。1回目は38.1%で、その割合は年々落ちている。初マラソンで、しかもランニング歴の浅いビギナーが増えたためと思われる。大会申し込み後の抽選で出場が決まってから走り始めた人もかなりいると聞く。

ビギナーがランニングを開始した時に気になるのは、急激な走行距離の増加による障害発生である。ランナーにとっては、走行距離がマラソンパフォーマンス向上の上で大きな指標となる。ビギナーとしても、結果を出すためにはある程度の距離を追うのはやむを得ないかもしれない。

このような「走りすぎ」に起因する障害を予防する手段として、「クロストレーニング」が注目されている。そんな中で、マラソンパフォーマンスに対するクロストレーニングの効果を明らかにするために、同一対象者による複数レースへ向けたトレーニング内容を比較検討した研究結果が発表された(吉岡利貢ほか「ランニング学研究」VOL.21 NO.2)。

市民ランナー1名を対象に、第3回東京マラソンに向けた自転車運動主体のクロストレーニングの効果について、この対象者の過去のレースに向けたトレーニング内容との比較を含めて実施したものだ。トレーニング開始前(レースの12週前)とトレーニング開始後(レースの直前)にテストを行い、12週間のトレーニング結果を評価する内容になっている。

トレーニングは、①自転車エルゴメータによる週1~2回のインターバル・トレーニング、②クロスバイクによる通勤、③週1~2回のランニング(17km~18.5km)が中心だ。結果は、自転車エルゴメータのトレーニングを工夫することで大腿四頭筋やハムストリングを強化でき、少ないランニング練習にも関わらず、過去3年以内の自己最高記録を超えることができた。自転車運動主体であっても、トレーニング量が同等であれば、ランニング主体のトレーニングと同等の効果を得られる可能性があるということである。

特に「骨格筋のみに着目すると、自転車運動が同等の運動時間であってもランニングより高いトレーニング効果を引き出す可能性」があることに着目している。上り坂におけるランニングと同様に、大腿部を構成する筋群の代謝的適応を引き起こすためのトレーニング手段として効果を発揮しそうである。

本研究の対象者は、サブスリーランナーで過去に陸上競技長距離種目の専門的トレーニングを行った経験者だ。したがって、今回の研究結果を活用するには、「自転車運動を用いたクロストレーニングによってマラソンパフォーマンスに関する股関節伸展筋群を強く動員するランニングおよびペダリングの技術を習得すること」が前提条件となろう。

この研究には、一般の市民ランナーがトレーニングと故障防止を考える上で、重要なヒントが秘められている。よく検討し、活用していきたい。
by hasiru123 | 2010-04-05 08:41 | 練習