夢のマラソン

マネーボール

野球には様々な価値基準や指標がある。これらの重要性を数値から客観的に分析し、采配に統計学的根拠を与えようとする考え方がセイバーメトリクスと呼ばれるものだ。選手評価と戦略についての「科学」といえるだろう。

メジャーリーグ選手からアスレチックスのフロントに転身したゼネラルマネージャー(GM)が、弱小球団を強くするために採用したマネジメントがこれだった。現在公開されている映画「マネーボール」に出てくる。GMとは、ブラッド・ピットが扮するビリー・ビーンのことである。データ分析が得意な野球オタクのピーター・ブランド(ジョナ・ヒル)との出会いがきっかけで、二人三脚で取り組むことになる。少ないコストでいかに強いチームを作るかに腐心するのだが、これまでの野球の常識を覆すことから、周囲からの反発を招く。監督、選手、スカウト、オーナー等々。

その考え方はなかなか周囲に浸透せず、結果がでない。モノを投げつけたり壊したり、シーズン中に選手をトレードに出すなどの荒療治もする。そのうち成果が現れ、破竹のリーグ新記録の20連勝を達成。その年はプレーオフに進出するまでに成長する。しかし、そこまでだった。

映画は、そこからがうまい。数字と心とのバランスが妙である。統計的に算出された数値に走ることなく、感情によりかかることもなく、きちんとストーリーがまとめられている。

ピーターがビリーに見せたビデオの1シーンが効いている。2塁で刺されることに恐怖心を抱いているチームの選手がヒットを打った。一塁を回りかけたところで転倒し、慌てて戻り一塁へ滑り込む。ところが、打球は外野スタンドに入っていた。

ビリーの方針は間違っていなかったのだ。ただ、負け続けてきた者のトラウマに迷わされただけ。そう言いたかったのだろう。その後、他球団はこぞってセイバーメトリクスを導入し、勝利に導いたチームもある。日本にも、積極的に取り入れた監督が現れ、今や常識になっている。

実は、私も走ることにおいてトラウマに悩まされてきた。それは、今年もマラソの30キロ以降に失速するのではないかという恐怖だ。一塁ベースへ回りかけて転倒したくだんの打者みたいにならないよう走り込んできたつもりだが、その成否はレース直前の故障で来年に持ち越しとなってしまった。転がり込むような形で、また新しい目標ができた。
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by hasiru123 | 2011-12-04 23:02 | マラソン
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