新谷の走りは日本の長距離界に光をあてた

8月18日でモスクワの世界陸上が終わった。暑い日があり、肌寒い日がありで、選手たちにとってはコンディション作りに相当苦労したのではないかと思う。寒暖の差が大きく影響するマラソンは、女子が30度を超える猛暑だったし、男子は22度ではあったが直接日差しを受けた選手たちには、これまた暑いレースだったようだ。

日本の選手たちの活躍ぶりは毎日のテレビを通して見させてもらった。全体としては、女子マラソンで福士加代子が銅メダルを獲得し、木崎良子が4位に入り、女子1万メートルで新谷仁美が5位入賞したのが光った。男子マラソンも、女子の活躍に刺激を受けてか、中本健太郎が5位入賞を果たした。

女子マラソンは、昨年のロンドン五輪で入賞者ゼロという大惨敗を喫したことを受けて、今大会では復活を期すべく、参加可能出場枠である5枠を使わず、「入賞を狙える精鋭」3人が選ばれた。女子1万メートルの方は、選考会である日本選手権で新谷の圧勝で、それに続く選手が見当たらず、これも参加可能出場枠の3枠を使えなかった。それがどんな結果をもたらすのかと期待もし、不安な点でもあった。

フタを開けてみれば、不安を晴らす活躍ぶりだった。福士はこれまでトラックで五輪3回、世界選手権も4回出場しているが、2009年世界選手権1万メートルの9位が最高だった。5000メートル、ハーフマラソンの日本記録保持者だが、国内のマラソンではなかなか結果を出すことができなかった。世界のマラソンに初めて挑戦し、念願の初メダルをつかんだ。

女子1万メートルの新谷の走りは、見事だった。ラスト500メートまで集団を引っ張り続けるレース展開には、これまでの日本人選手にはなかった積極さにあふれるものがあった。東アフリカ勢の選手に追いつくにはこれしかないというお手本を見せてもらったような気がする。4人のアフリカ勢にはかわされはしたが、新谷に振り落とされた選手が14人いたということだ(出場者数が19名だったので)。

日本人選手はスピードやスプリントにおいて、世界のトップとは大きな開きがあるのは歴然とした事実である。その土俵で戦うには、ついて行けるところまでつくしかない。そこから先は、つけるようになった段階で戦術を考えればいいことだ。今回の結果から、がんばり次第でラスト500メートまではつけることが分かった。これもまた事実である。

新谷へのインタビューで「メダルが取れなければ、この世界にいる必要がない」というコメントが紹介されていたが(8月12日付毎日新聞)、悲観するには当たらない。出口はまだ先かもしれないが、新谷の走りは将来の日本の長距離界に光をあてたという意味で、その功績は大きい。
[PR]
by hasiru123 | 2013-08-19 18:58 | マラソン