再び、スポーツマンシップ

これもまた英国のカレッジの話。

ある朝、礼拝堂の美しい塔の頂点に白い便器が懸けられていた。地上何十メートルもあるところに誰がどうやって運んだものか。群衆はそれを見上げ、笑い、怪しむ。学校当局には取り除く方法を諮ったが、危険を恐れてだれも応じない。面白半分に新聞が書き立て、下院でも緊急質問が出た。

掲示が出た。犯人のユーモアに敬意を払いつつ、「時間的限度があり、これを超えるとあくどい悪ふざけに堕する恐れがある。盟友は部隊を退く潮時に配慮するものであることを記憶されたい」と。しかし、何の進展もなかった。

再度の掲示で、「今夜中、陶器が取り除かれない場合、当局は校僕に命じてそれを行わせるであろう。その校僕は家族系累のないものから選ばれるであろうが、この高塔に登る技術をもつものがいるかどうか疑問とされる。ケムブリッジ大学が貴下のスポーツマンシップに呼びかける所以である」。翌朝、塔から白い鳩が飛び去って行ったという、ただそれだけの話。

以上、池田潔著『自由と規律』(岩波新書)からの孫引きである。ここでもスポーツマンシップに触れている。「相手が生活のため校僕を業としているものであれば忽ちこれに譲るのも、要するにこの精神に外ならないのである」と池田は書いている。英国人の生活には切っても切り離せない深い関係を持っているようだ。人はその香に気がつかないかもしれないが、「一旦その社会を離れてみると、なんとその香の強烈なことか」とも記している。

その「香」がまったく感じられないのが、東京都議会である。本会議で下村文夏議員が女性蔑視のヤジを浴びせられた問題で自民党の鈴木章浩議員が「早く結婚したほうがいい」と発言したことを認め、謝罪したことが報じられている。

問題のヤジがあってから5日目のことだ。鈴木氏は名乗り出なかった理由を聞かれて「話す機会を逸した」。3日目には「寝耳に水でびっくりした」とヤジへの関与を否定していた。ヤジの真意について報道陣から聞かれると、「少子化、晩婚化の中で、早く結婚をしていただきたいという思いがあった」。「あくどい悪ふざけ」ではないだろうか。

人は突然個人のプライバシーを傷つけたり、弱い立場の人を攻撃したりする議員になったりはしない。日頃から都議会の中に誹謗や中傷を空気のように投げ合う風土があったのではないか。鈴木氏だけの問題ではなく、家庭が、学校が、地域が、こうした女性の声が届かない風土を変えていくしかない。
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by hasiru123 | 2014-06-25 19:44 | その他  

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