人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ブログトップ

一人で走る

いま、プロ野球はキャンプが盛んである。松坂が日本のマウンドに立ったとか、広島の大瀬良がスプリットの習得に取り組んでいるとか、今キャンプ初のフリー打撃を行った大谷が48スイングで11本柵越えを連発したなどと、話題にこと欠かない。

日本のプロ野球の場合は、キャンプという集団での練習が2ヶ月間も続く。その間にはオープン戦や紅白戦などもあるが、ほとんどが合同練習である。一人で黙々と調整に励むのはブルペンの投手と独自のトレーニングメニューをこなす故障組の選手たちだ。9人で戦う競技とはいえ、野球とは何と集団練習の多いことか。

ランニングとは大きな違いである。もちろん、競技として取り組んでいるランナーは集団で走ることが多いが、それでも一人で走るウエイトは高い。むしろ一人できっちり走れることが一人前のランナーとして成長するための基本的条件だと言っても過言ではない。

たとえばマラソンを走ろうと思ったときに、いきなり42.195キロを走れるものではない。練習で細胞が生まれたり死んだりという繰り返しのなかで、マラソンに適した組織が形成されるには数ヶ月から1年くらいはかかるといわれている。そういう練習はぜったいに一人でなくてはできない。

たとえば、瀬古利彦さん(現在DnNA総監督)。早稲田大学に入学したばかりのときに、6キロも体重がオーバーし、当時の中村清監督にひたすらジョグすることを命じられたそうだ。この練習も、もちろん一人である。ちなみに、このシーズン早々に、5000mで高校時代の自己記録を塗り替えている。

たとえば、アラン・シリトーの『長距離走者の孤独』(新潮文庫)。主人公の少年が、他の少年たちより一時間早い朝5時に起床させられ、練習に励む。凍てつくような寒さの中を走りながら、色々なことを思い出していくのも一人で走っているときだ。

単独のランニングは、現在の多様なライフスタイルに適した練習方法でもあるのだ。好きな時間に好きなペースで行える上、自分でじっくり考えながら取り組むことができる。今どんな練習をしなくてはいけないか、自分の頭や身体の中で熟成させ、発酵させる絶好のチャンスである。一人の練習はランニングにぴったりの練習方法といえるだろう。

ただし、一人で走ることの難敵は「三日坊主」。何しろ、走れと叱咤する者がいない。

楽しみながら、長く続けられたらしめたものだ。後は、孤独のランナーにならないよう、ときどきいっしょに走れる仲間をさがそう。
by hasiru123 | 2015-02-14 22:25 | 練習