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私のトップスリー 北京世界陸上を見て

今年の世界陸上の見どころはたくさんあって、近年になくレベルの高い面白い大会だった。そして、会場の北京国家体育場(通称:鳥の巣)は連日多くの陸上ファンで埋め尽くしていた。アジアでも、陸上競技でこれだけのお客さんを呼べることを実証したのは喜ばしい。

競技の中身では、何と言ってもロンドン五輪や2年前のモスクワ世界陸上の再現かと思わせるようなボルトやファラーの強さが目立ったことだ。来年のリオ五輪でもこの二人を中心にレースが動くだろう。

私の印象に残った競技を3つ選んでみた。

まず、男子十種競技でアシュトン・イートン(米国)が世界記録で優勝したことを挙げたい。最後の1500mこそ2位だったが、それ以外の9種目はすべてトップだった。こんなにも強く、しかも種目間のバランスのとれた競技者を見たことがない。特に、1500mは圧巻だった。4分18秒25を切ると世界記録が成る。先頭の選手から引き離され、なかなかペースが上がらない。疲れがだいぶたまっていて、足が重そうだ。あと1周の鐘が鳴ると見違えるようにペースを加速させ、4分17秒52でゴールイン。10種目にしてこの記録も大したものだが、計ったかのようなスパートは長距離ランナーのデッドヒートを見ているようだった。

二つ目は、男子やり投げ。上位二人の90mの攻防は見ごたえのあるものだった。優勝したのはケニアのジュリアス・イエゴ。2投目までは入賞ラインぎりぎりの8位だったが、3投目に92m72を投げて勝負を決めた。ハイレベルの争いに思わず鳥肌が立った。日本の新井良平(スズキ浜松AC)も83mを超えたが9位に終わり、上位8人が進める4投目以降には進出できなかった。

常に82m以上を投げたら入賞が見えてくるという日本の常識が通用しなくなった。3位だったテロ・ピトカマキ(フィンランド)が87m64を投げていることから、この種目のレベルは確実に上がったといえるだろう。

もう一つは、残念だったという気持ちも込めて男子マラソンを挙げたい。以前にも書いたが、優勝したG・ゲブレスラシエ(エりとりア)は19歳の伏兵だった。また、2位と4位に入った選手は、北京の暑さにもかかわらずシーズンベストを更新している。ケニアの実力選手が上位に入ることができなかったのは意外だった。そういう意味では、日本人選手だけでなく、走力のある選手も力を出し切れなかった男子マラソンだったと言えるのではないか。ただし、力を出せなかったその中身はだいぶ違うと思うが。

今回初めてエりとりアから優勝者を出したが、外務省のホームページから同国に入ってみると、西にスーダン、南にエチオピア、南東部にジブチと国境を接し、北は紅海に面していることが分かる。宗教は、キリスト教、イスラム教他が同居しているらしい。そのことからも複雑な政治情勢だとがうかがわれる。人口が約560万人で、面積は北海道と九州とを併せた広さとほぼ同じだそうである。

そのエリトリアのゲブレスラシエが「金メダルを獲得した陰には、日本の支援があった」と毎日新聞が報じていた(8月28日朝刊)。ボランティアで20年以上、同国を支援する宮沢保夫さんと日本のスポーツメーカーの協力に加えて、今後は大学の医学部門の支援を得て、陸上の高地トレーニングの効果を検証するとのことだ。金銭面での支援だけでなく、選手強化というソフト面での支援は、これからのスポーツ交流には欠かせない。箱モノを作ることや日本人選手の強化よりもこちらの方が、五輪の価値を高めることにつながるのではないかと思う。
by hasiru123 | 2015-09-07 18:16 | 話題