夢のマラソン

映画『リトル・ランナー』を観る

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この映画の核心をなすものは「奇跡」です。ラルフ少年の「奇跡を起こせば病院でこん睡状態の母親エマを助け出すことができる」との信念で、ボストン・マラソンの優勝を目指します。そういった強い意志をもって、様々な困難に立ち向かっていく14歳の少年を描いています。ただし、よくあるスポーツ感動作品ではなく、観客を最後まで引っ張っていくストーリーと意外性を秘めたドラマに堪能しました。

舞台は、1953年のカナダのハミルトンで、最終局面であのボストンマラソンが登場します。戦争の傷跡を残しつつも古きよき時代の地方都市と、少年が学ぶカトリックの私立学校という設定がうまくマッチしています。地図で調べますと、ハミルトンは五大湖の最も東にあるオンタリオ湖の西側に位置していて、すぐ北にはトロントが、また南東にはすぐアメリカが控えている立地であることがわかりました。

私立学校の若いヒバート神父はラルフ少年の「奇跡」を起こそうという願いに共感し、ともに祈ろうという気持ちと、権威主義的な聖職者のフィッツパトリック校長との宗教観をめぐる対立が、この映画のもう1つのテーマになっています。ラルフ少年を助け、苦労し、悩むことによって、「奇跡」が起こることを祈ろう、信じよう。その過程で、神父も校長も心変わりして「まだ祈りが必要らしい」ことを感じ取ります。

マラソンをやっている者にとって興味深かったのは、1953年ころのランニングギアでした。黒いランニングシューズや幅広のランニングシャツなど、アンティークな衣装がその時代のノスタルジーな雰囲気をかもし出しています。

また、ラルフ少年の演技力もさることながら、彼はランナーらしい体型をしていて、走るフォームが初心者のときも、そして力をつけてきてからのフォームもなかなか堂に入っていました。映画を見た後で知ったのですが、マイケル・マッゴーワン監督は29歳のときにデトロイト・マラソンで優勝した経験を持つ映画監督だそうです。きっと、走ることにおいてもきめ細かい演技指導がなされたことは想像にかたくありません。

本番のボストン・マラソンでは、無名の少年が並み居る強豪と激しく競り合います。果たして病床の母親を救う「奇跡」は起きたのでしょうか。

なお、「奇跡」とは「既知の自然法則を超越した不思議な現象で、宗教的心理の徴と見なされるもの」(広辞苑)をいうそうです。「神の愛を伝える」というキリスト教的な背景を知っておくと、この映画をより深く理解できるのではないかと、観たあとから思いめぐらしています。
   (東京・渋谷のbunkamuraル・シネマで上映中)
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by hasiru123 | 2006-03-12 19:43 | その他
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