2007年 07月 29日
「ランニング学研究」から(2)
平成18年4月から介護保険制度が変わりました。改正ポイントの一つに「介護予防」を重視する仕組みへの変更があります。介護状態が軽度の人に対しては、介護予防を重視して介護度が進まないように状態の維持・改善に努めようという施策です。背景には、高齢化が加速し、介護保険の利用が急速に拡大してきたことがあります。
介護保険制度の財政的な事情以前の問題として、介護状態になってからの対応よりも介護状態にならないように(あるいは少しでも遅らせるように)事前の手立てを行う方が少ない労力で済みます。また、その方が前向きに取り組めます。そんな超高齢化社会が進行する中で、ランニングをはじめとする運動が介護予防の鍵であるという提言がまとめられました。
「超高齢化社会へ、ランナーからの提言 鍵は運動習慣にあり!」というタイトルで高齢者体力測定をベースに報告されています(報告者は京都府立医科大学の木村みさかさん)。
東京オリンピック以後、壮年体力テストが標準化されましたが、これは60歳未満が対象。「一般の高齢者の体力測定法に関する資料は皆無であった」ことが背景にあって、高齢者向けのバッテリーテストの事例に多くが割かれています。
簡便な持久性評価方法として紹介されているものに「シャトル・スタミナ・ウォークテスト(SSTw)」というのがあります。10mの置き床に立てられた2本のポールの間を、3分間にどれだけ速く歩けるかを測定するものですが、これは最大酸素摂取量との高い相関が認められるとのことで、安全性の問題から高齢者への測定が難しい最大酸素摂取量に代わる指標に使えそうです。
私が注目したのは、片足立ちで平衡性を評価するのに使用している「閉眼および開眼片足テスト」でした。閉眼で10秒以上、開眼で30秒以上できるのが一つの目安だそうですが、ほとんどの高齢者はそれぞれ5秒以下、20秒以下に分布しています。試しに自分でもやってみたのですが、閉眼片足立ちの10秒以上というのは、なかなか難しいのです(特に故障している左足)。これまでのデータからは、閉眼片足立ちは散歩程度の運動習慣を持つ者がない者よりも有意に優れ、、また開眼片足立ちは太極拳や気功、社交ダンスなどを行っている者はそれ以外のスポーツを行っている者よりも有意に優れているとのことです。平衡性は歩行能力と相関が高いのですので、継続的な運動が大事です。
7月28日の各紙の報道によると、日本人の平均寿命は、男性79.00歳、女性85.81歳で過去最高を更新したとありました。男性の20.6%、女性の43.9%が、90歳まで生きる計算になるそうです。長く生きられることは結構なことですが、健康で暮らせなければ意味がありません。適度な運動の継続で、前向きに生きたいものです。
私の所属している若葉グリーンメイトでは、今朝も約21キロのビルドアップ走を行いました。若い人は20代から上は60歳を越える人まで、みなさんよく走ります。こんな元気な集団でも、いずれは介護保険のお世話になる日が来ると思います。できれば介護状態になる日を少しでも先へ延ばせるならば、それにこしたことはありません。ランニングが高齢者の介護予防に役立てればありがたいことです。