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フォローの風

競技場の設計によっては、同じ400mのトラックでも広く感じたり、反対に狭く感じたりすることがあります。観客席のフェンスとトラックとの距離や、競技場の周辺を遮蔽するようなものがあるかないかなどで感じ方が違うからでしょう。幅跳びのピットがトラックの外側にあるか、フィールドの内側にあるかでも異なります。当然ながら、周回数の多い長距離選手にとっては狭く感じるトラックのほうが走りやすいと感じるでしょう。ゴールが近いような気がするからです。

野球場でも同様のことが言えます。周りを遮蔽するものが見えない地方の野球場よりも、すり鉢状で周辺にビルが林立している神宮球場のほうが狭く感じて(実際に狭いのですが)、なんとなくホームランが出やすいように思えてくるものです。ピッチャーから見れば、この方がいやでしょう。

それでは、大人と子供ではどちらが1年を短く感じるか。当然ながら(というのも変ですが)、大人のほうでしょう。

このなぞなぞを出した先生がいました。分子生物学者で青山学院大教授の福岡伸一さんです。三省堂(神保町)で恒例のサイエンスカフェでのこと。情報のソースは、私の尊敬する毎日新聞記者の元村有希子さん(科学環境部)がコーディネーターをしたときの彼女のブログからです。

元村記者の理由は「子どもは経験の大半が未経験。大人は大半が経験済み。大人になるほど印象的な場面が減ってくる。印象的な場面をつなぎ合わせた物理的な時間が短くなるから、短く感じる」というもの。つまり「気のせい」説です。

福岡先生の仮説は、子どもの体が持つ時間軸と、大人の体が持つ時間軸とを比べると、子どもは新陳代謝が活発で、体内時間が速い。大人はその逆。だから、大人の体が1時間と感じている時間が、物理的には3時間だったりする。それに気づいた時に「おや!8時間と思ったらもう1日経っていたのか!」という驚きにつながる、というものでした。

どちらももっとものようで、甲乙つけがたいものがあります。であるならば、フルマラソンを走るとき、大人と子どもではどちらが競走時間を短く感じるか。短く感じたほうが絶対に有利である。かりに両者とも4時間でゴールできたとしたら、時間軸の長い子どものほうが長く走らされたと感じる分だけ消耗が激しいのではないでしょうか。同じように、中高年ランナーと若いランナーを比べてみると、時間軸の長い若いランナーのほうが不利だということになりませんか。

私は、二つの説を折衷してこんなふうに考えました。距離が長いか短いか、不利か有利かは気の持ち方次第でどうにでも変えられる。レースに臨むとき、自分にフォローの風が吹いていると感じたら、思い通りの勝負ができる、と。自分にいいように理解するに限ります。ですから、子供より大人のほうが1年を長く感じるとしたら、きっと大人は何事も先延ばしして、後世のことを考えずに歳をとっていくでしょうね。そんな気がします。

8月26日から大阪で世界陸上がはじまります。日本選手のみなさん、自らの意思でフォローの風を吹かせて、ぜひ勝利の女神を呼び込んでほしいと願っています。
by hasiru123 | 2007-08-11 18:21 | その他