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トップアスリートとは

9日間にわたる世界陸上大阪大会が幕を閉じました。大会前半は、昼間行われた予選で暑さのためのアクシデントが続きましたが、全体としては手に汗を握る好勝負が多く、見ごたえのある大会だった思います。

短距離はアメリカ、中長距離はエチオピアとケニアのパワーが眼を引きました。男子1万メートルのあった3日目は、私もぜひ足を運びたいと思っていたのですが、都合で実現できませんでした。そして、残念ながら日本は世界のトップとの差が拡大する結果となり、地元開催を追い風にすることができませんでした。選手にとっては「メダル5個、入賞6~8個」という日本陸連の目標がプレッシャーとなったかもしれません。高い目標は、あるときはモチベーションを引き出すトリガーとなりますが、スタートでつまずくと負の連鎖につながりかねない面もあるようです。

総括は、改めて日本陸連から出されるでしょうから、それを待ちたいと思います。日本の陸上競技の現状と今後の施策について、8月30日にNHKのコラム番組「時論公論」のなかで山本浩解説委員がこんな解説をしていました。

<長距離ロードレース以外は、一部の選手を除くと経済的にも練習環境の点でも厳しい状況下に置かれている。大学と実業団中心で進んできた日本は、長距離や駅伝に力を入れてきたが、トラックとフィールド種目には見切りをつけたところが少なくない。一方でフランス陸上界には、今年から新しいプロ化の動きが見られ、「国内陸上競技リーグ」が誕生した。これによって陸上競技の活性化を狙っている>

実は、フランスは2012年にパリ五輪の開催が決定しています。五輪対策かと思えば、合点がいくのですが、<プロ化したフランス陸上界>はわが国の陸上競技の活性化とファンの拡大のためにも、検討に値する試みだと思います。ぜひ、日本もこれを機に意欲的な、そして新しい施策を講じてほしいものです。

大阪の世界陸上は、期待値からマイナスの方向にぶれてしまいましたが、日本の選手たちの競技姿勢に対して心に感じ入るものがありました。それは、メダルの獲得を期待されていたハンマー投げの室伏広治をはじめとする選手たちです。彼らは、結果が出なくとも、競技終了後にきちんとコメントをし、原因についてわかりやすく語ってくれました。さらに、心を引いたのは、室伏選手がハンマー投げで優勝したイワン・チホン選手と一緒にベラルーシ国旗を手に競技場を回っていたシーンです。五輪王者にふさわしい行為に、心から拍手を送りたいと思います。

結果を出せなかったプロ野球選手がベンチを蹴ってロッカールームに引っ込んだり、土をつけられた力士が憮然として支度部屋に戻ったりするシーンを眼にすることがありますが、トップアスリートとはいえないでしょう。トップアスリートには、それゆえに求められる言葉と行動があると思うからです。成績だけではなく、応援する人々に感動を与えるヒューマン・ネイチャーともいうべきものがあってほしい。大阪世界陸上にチャレンジした日本の選手たちに誇りを持てたことは、陸上ファンとして幸せなことでした。
by hasiru123 | 2007-09-03 22:05 | その他