人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ブログトップ

考える走者

梅雨が明け、連日の猛暑である。インターバル走などスピードを加えたトレーニングを行いたくても、体がついてこない。この夏は、日中に走ることをやめた。いつ走るのかというと、早朝である。

早朝は、まだ体が覚醒していないのと、朝飯前で十分な食事ができていないことから、本来なら強めのトレーニングを行うにはふさわしくない時間帯だ。かといって、涼しくなりかけた夜も、そのあとの飲食や就寝を考えるとあまり都合がよくない。しかし、日中は効率の点でもっと都合が悪い。というわけで、ウィークデーと同様に休日(主に土曜日)のランニングももっぱら早朝にやることにした。

自宅の近くには自由に使えるトラックがないので、農道で未舗装の直線コース(片道875m)をトラックの1000mに見立てて、メニューを組んでいる。砂利が敷かれていることと一部道の真ん中に轍(わだち)ができている点を除けば、いいコースである。信号はないし、土なので足にやさしい。木陰は全くないが、早朝の日差しはそれほどきびしくない。

ここでは、夏のランニングを安全に走る方法について述べてみたい。まずウエア。暑いのを我慢しないで、涼しいスタイルに努めたい。ランニングシャツやパンツは吸湿性のない風通しの良いものを身につけ、日差しをよけるための帽子を忘れない。特に後頭部に要注意だ。首筋に直射日光が当たらないよう後ろにひさしがあるものや、帽子の後ろからハンカチを垂らすなどして覆うとよい。

二つ目は水の補給だ。通常のトレーニングは体とコミュニケーションを図りながら対応していくが、給水に関しては体がメッセージを発信する前に対処する。すなわちのどが渇いたと感じる前に摂ることが大事である。その理由は、発汗量に給水量が追いつかないことが多いからだ。ゴール(またはランニングの終了)までの距離が少ない場合には何とかなるが、距離が長い場合には、取り返しのつかないことがある。熱中症や脱水症で、熟年ランナーでもよく犯すミスだ。練習開始前にしっかり補給し、そして練習中にもこまめに摂ることに気を配ってほしい。

私の場合は、正直言って給水が上手ではない。レースペースで走っているときにうまく飲み込むことができない。また、水を摂ることによって腹痛を起こすこともある。だからといって、給水しないのは危険である。飲みたい、飲みたくないにかかわらず給水することでリスクを最小限に抑える、と思って摂っている。それも練習のうちだと言い聞かせている。

長距離を走るときには、補給する水の中身も大事である。糖質とナトリウムである。長い距離のランニングではエネルギーの補給という意味で糖質が必要である。そして、発汗によって水分と同時に失われるのがナトリウムである。のどが渇いたからといって水だけを摂っていると、水分のバランスを崩す「低ナトリウム血症」という一種のスポーツ障害を引き起こす場合があるので、気をつけたい。一般のスポーツドリンクには糖質とナトリウムの両方とも含まれているのもが多いので、水と併用するとよい。

三つ目に重要なことは、無理をしないことである。春や秋と同じ感覚で同質の練習を求めると、疲労が蓄積して、食欲不振やスランプを招くことがある。特に、梅雨の合間や梅雨明け直後が要注意だ。私にも、体がまだ暑さになれない時期にやりすぎて、消耗してしまうという失敗が何度かあった。

ランニング学会の会長をされたこともある群馬大学教授の山西哲郎さんは、夏のトレーニングについてこんなことを書いている。「困難なときほど、人間は考える動物になる。暑いときこそ、考える走者になる。・・・太陽が友だちのようになってから、夏の本格的トレーニングは始まる」(「RUNNERS DIARY1991」のコラムから)。
by hasiru123 | 2008-07-27 19:03 | 練習