夢のマラソン

2017年 05月 17日 ( 1 )

マラソン代表 2段階の選考で

2020年東京五輪のマラソン代表選考方法が決まった。日本陸上競技連盟は、これまでの協議による選考から、同一レースで競う方法に改めた。

19年9月以降に開催する「マラソングランドチャンピオンレース(MCGレース)」から男女各2人の代表を決め、残り1枠は19年秋~20年春の国内3大会から記録最上位者を選ぶ。

「主観がなくなり、客観性のみになったことで、より明快になった」と評価するのは、バルセロナ大会とアトランタ大会のメダリスト有森裕子さんだ(5月6日の毎日新聞「時評・点描」)。代表選考をめぐるトラブルの渦中にあった人の発言だけに、日本のマラソンは基準を巡って大きな一歩を踏み出したといえるだろう。

陸連が4月18日に公表した「東京2020オリンピックマラソン日本代表選手選考方針」※を整理すると、以下のようになる。

MGCレース
1人目 優勝者 → 即内定
2人目 2位で期間内に「MGCレース派遣設定記録」を突破 → 即内定。3位で「MGCレース派遣設定記録」を突破し、2位の選手がこの記録を突破していない場合 → 即内定
3人目 MGCファイナルチャレンジで「MGCファイナルチャレンジ派遣設定記録」を突破した記録最上位者 
   ⇓
上位2人は自動内定(ただし、2人目の選手には内定条件がつく)
MGCレースの出場資格
1 MGCシリーズ(17年夏~19年春の指定5大会)で設定記録や順位をクリア
   または
2 ワイルドカードとして、①17年8月1日~19年4月30日の国際陸連公認の競技会で設定記録を突破、②17年世界陸上で8位入賞、③18年アジア大会で3位入賞、④MGCシリーズでMGCレースの出場資格者がゼロだった場合は強化委員会が出場資格相当と判断
MGCファイナルチャレンジ
19年秋~20年春の指定3大会で設定記録を突破し、3大会の記録最上位者

MGCシリーズは予選にあたり、MGCレースは決勝という位置づけだ。調整力や安定感が求められる。そして、MGCファイナルチャレンジはスピードを重視した選考といえよう。ただし、設定記録の突破者がいない場合は、MGCレースから3枠すべてが選考される。

MGCレースの2人目を決める際に使われる「MGCレース派遣設定記録」は、相当にレベルが高い。男子だと17年8月1日~19年4月30日に2時間5分30秒、女子は同じ期間に2時間21分0秒となっている。男子の記録は日本記録より46秒速く、女子は国内では出ていない記録にあたる。したがって、事実上男女とも3枠の代表者のうち2人は自動的に内定するといえよう。

また、「MGCファイナルチャレンジ派遣設定記録」は、19年5月に発表される予定である。

陸連が発表した「方針」を見て気づいたのは、選考の透明性や明確さ以外に、以下の2つの視点だった。

一つは「世界との距離を縮める」こと。「方針」に、法令の前文にあたる「編成方針」という項がトップにある。そこには、<目標>として「メダル獲得を目指す」が、<代表の条件>として「最大限持てる力を発揮する調整能力」と「世界と戦うスピードを有する競技者」が書かれている。競技能力と記録を高めることで少しでも世界に近づけたいという意図がくみ取れる。

MGCシリーズの各レースでは、大会ごとにMGCレースへの出場資格要件を変えているのは興味深い。たとえば、福岡国際マラソンは日本人順位1-3位が2時間11分以内、4-6位が2時間10分以内という具合に、1-3位よりも4-6位の方が厳しい基準を設けている。したがって、福岡で2時間11分超の記録で3位以内に入ってもMGCレースへの出場資格が得られないことが起こりうる。

MGCレースは競争重視だが、3枠目としてMGCファイナルチャレンジを設けて、スピードのある選手にチャンスを与えている。派遣設定記録が決まるのは2年後だが、おそらくワイルドカードの基準に近い記録が設定されるものと思われる。

二つ目は「事業性を限りなく追及する」ことだ。MGCシリーズの各レースは、2年間にわたり男子は10回、女子は8回の挑戦機会を経て、いわば決勝といえるMGCレースを迎える。これらの大会の視聴率を落とさない工夫がされている。

また、MGCレース終了後のファイナルチャレンジ。敗者復活戦に相当するが、男女とも3回ずつの大会がある。最後の1枠が決まるまで、いやがうえにもマラソンの関心をひきつけずにはおかないであろう。主催新聞社やテレビ局などに配慮した心憎い作戦だ。

これまで混乱の続いた代表選手の選考である。過去の失敗を学習し、主観的な要素を排した透明性の高い方法であると評価できる。あとは、本気でマラソンに取り組む若い選手が輩出して、長期にわたる各大会で自分がテレビに釘付けになる夢を見るとしよう。

※ 陸連のホームページからPDFファイルを開くことができる。 → http://www.jaaf.or.jp/files/article/document/10127-0.pdf

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by hasiru123 | 2017-05-17 20:34 | マラソン