2017年 07月 30日 ( 1 )

蟇股

ある若い文学者が泉鏡花の自宅を訪ねたときのこと。「先日、先生原作の芝居を拝見しました」と言うと、「かぶっていましたか」というのが第一声だった。「かぶる」とは、「劇場に客がたくさん入っている」という意味だそうだ。五木寛之さんが「サンデー毎日」6月11日号に書いていた。

また、作家の石川淳さんの編集担当者が新刊を持って挨拶にうかがうと、おほめの言葉を予想していた編集者に石川さんはひと言、「で、さばけてますか」ときいたという。「売れ行きはどうか」という質問だが、五木さんは「すこぶる粋な感じである」と納得しておられた。

ところで、最近私は「入っていますか」と聞かれることがしばしばある。氏子総代を務める三芳野神社(埼玉県指定文化財)の修理工事協賛への協力状況についての問いかけだと思う。大部分は補助金で賄う計画だが、一部足らざるところについては広く個人、法人から浄財の寄進をお願い申し上げている。現在は、3年半かけて行っている塗装工事(漆塗り)の真っ最中である。

その三芳野神社で、ひと月前に工事現場の内部を報道機関に公開した。新聞社や地元のテレビ局などに取材していただいたが、私もテレビカメラの背後から写真を撮らせてもらった。

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四季の行事がある度に社殿の内部に入って目にしていたが、じっくり観察したのはこれが初めてである。これまで、塗装が剥げかかったていたり、日焼けなどで経年劣化が進んでいたものに彩色が施され、明暦の時代(江戸初期)の姿に復元されつつある様子を実感することができた。

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その中でも特に目を引いたのが、塗装中の「蟇股(かえるまた)」だった。蟇股は寺社建築に用いられる、台形の斜辺に繰型(くりがた)をつけたような材のことだ(山川出版社『日本史広辞典』による)。塗装職人の地元である日光市の工場で作業中のものを、この日のために一時持ち帰ってもらったものである。飾られている鶴が今にも飛び出してきそうな気配すら感じられる。

今秋には、工事に差し障りのない範囲で現場を地元の子供たちに見てもらえるようイベントを企画中である。

(写真上)外側から見た天井部
(写真下)一部の蟇股


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by hasiru123 | 2017-07-30 22:46 | その他