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夢のマラソン

カテゴリ:基礎知識( 29 )

山岳遭難事故に学ぶ

山岳遭難の多い長野県で2014、15年の遭難件数を見ると、北アルプスでは7、8、9月の遭難が多いことがわかります。そして遭難の状況を調べてみますと、猛暑だった15年8月は「疲労」が原因の遭難がとても多いのです。
(中略)
前述の長野県のデータを見ると、14年の「疲労」遭難は5月に多く、原因は低体温症、つまり「寒さの疲労」でした。15年は8月の晴れの日に「疲労」遭難が多く起きています。具体的な状況で見ると、夏の遭難は心臓発作、熱中症、高山病が原因の多くを占めています。
(中略)
これらの夏の「疲労」遭難の事例を見ると、「夏の晴れた日」という気象条件が影響していると気がつきます。それを踏まえると、夏は「脱水」の疲労が遭難に大きな影響を与えていることが、容易に想像できると思います。
(中略)
14年から15年にかけて、登山中の心臓死が増えました。昨年夏にこの連載「防ごう!山での心臓突然死」のシリーズでも紹介しましたが、脱水は心臓突然死のリスクも高めます。

以上は、心臓血管センター北海道大野病院医師で国際山岳医の大城和恵さんが「デジタル毎日」の「登山外来の現場から」と題して連載している記事からの引用である。猛暑の登山は疲労が招く遭難に注意を、と呼びかけている。

夏の「疲労」による遭難事例は、夏のランニング事故にもそのままあてはまることだ。気温が上昇した時間帯に走っているランナーを街で見かけることがある。ここ数日間は、朝とはいえ9時を過ぎると30度をゆうに超えていた。健康な大人でも上記の山岳遭難のような事故が、夏のランニングで起きてもおかしくない。

一昨年の同時期の小ブログに書いたことではあるが、脱水回復までに時間的な遅れが生じることから、「無自覚脱水」に陥りやすいことが知られている。運動中に過不足なく水分を補給し続けることは不可能だとしても、水をとらない限り脱水へ向かって進行していくことを念頭において、「早めの給水」が欠かせない。練習の前後はもちろんのこと、走っている途中でもこまめな給水に努めるべきである。

なお、暑さ対策としての水分には市販のスポーツドリンクを利用するとよい。また、自分の好みに合った「経口補水液」(注)を作って補給することもできる。夏の脱水対策は、小まめな給水にしかず、だ。


(注)私はこの時期になると、マイ「経口補水液」を毎晩のように作って、冷蔵庫に入れ、翌朝の練習の前後に飲んでいる。以下、私の作成例。水500mlに砂糖20g(ボトルキャップ3杯または1個3.3gの角砂糖6個)と塩1.5g(透明スプーン1杯)を加えてよくかき混ぜる。レモン汁を入れると飲みやすくなる。


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by hasiru123 | 2016-08-10 21:25 | 基礎知識

スポーツ選手、とりわけランナーに関心の高い健康食品について書いてみたい。

毎日摂取している食品にはビタミンやミネラルを始めとする多くの健康に良いとされる成分が含まれている。本来は食事や運動、睡眠などで健康維持を図り、体調を崩したときは医療機関の診断を仰ぐというのが通常の生活スタイルだと思う。ところが、最近はビタミンなどの栄養素や動植物の抽出物を食品として補給するいわゆる健康食品が多く市場に出るようになった。

健康食品に対しては、医薬品との混同を避けるために機能性を表示することは法律で制限されている。それが可能なのは、これまでは特定保健用食品(トクホ)と栄養機能食品に限られていた。

今年4月に、この二つの食品とは異なる新たな食品の機能性表示制度がスタートした。「機能性表示食品」である。

これまでの制度と大きく異なるのは、「商品ごとに、その有効性や安全性の根拠となる試験や研究報告が販売前に消費者庁ホームページで公開されるので、中身を読んで確認できることだ」と毎日新聞の小島正美記者は書いている(7月14日「記者の目」)。これまで、トクホはその情報のほとんどを公開してこなかったからだ。ますは、その点を評価したい。

一方で、心配な点もある。

機能性表示食品の安全性や機能性はどのように保証されるのだろうか。消費者庁によると、安全性は「今まで広く食べられていたかどうかの食試験」「安全性に関する既存情報の調査」「動物や人を用いての安全性試験の実施」のいずれかによって評価されるという。また、機能性は「最終製品を用いた臨床試験」と「最終製品または機能性関与成分に関する文献調査(研究レビュー)」のいずれかによって評価するとある。

これらの情報は事業者から届け出られ、ホームページで公開される。一方で、届出制であることから安全性に問題があるものや科学的な根拠があいまいなものが多く出回ることはないだろうか。また、それらのチェックはどこが担うのか。

消費者が機能性表示食品を適切に選ぶために事業者が公表した情報をチェックすることになるが、そのための時間が十分に確保されているだろうか。消費者庁は「商品の販売日の60日前までに届け出る」と説明しているが、同サイト内の「届出詳細内容」を見ると、販売予定日はあるが届出日の記載がないため、販売日までに消費者に情報開示される期間がどのくらいあるのか不明だ。

また、届出情報には多くの安全性や品質、機能性等ついての情報が詰められているが、それらを読みとるには一定の専門知識がないと難しい。消費者に分かりやすく改善する必要があるし、消費者も読みとる力を身につけないといけない。

実際に機能性表示食品を手にとってみると、ラベルなどに記載された表示内容が細かく、字も小さくて読みにくい。一方で、消費者は食品の有効性だけでなく1日当たりの摂取目安量や摂取の方法、摂取上の注意点などをしっかり確認する必要がある。誤った使い方をすれば、効果を発揮しないだけでなく健康を害するリスクがあるからだ。

多くの課題を背負った中での新しい表示制度の出発である。怪しい健康食品が淘汰されればと期待しつつ、見守りたい。
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by hasiru123 | 2015-11-19 21:00 | 基礎知識

心理戦

かなり前だが、ある陸協が開催した記録会に参加したときのことである。

種目は男子5000m。トラックレースは久し振りで、スパイクの感触を確かめるために走ってみたくなった。記録会だから、本来は記録への挑戦が目的である。しかし、この日の気象コンディションは、5月上旬なのに最高気温30度という異常な暑さだった。記録は度外視して、イーブンペースをキープする戦術で臨んだ。これが高校生時代の自分であったなら、まわりのペースに惑わされて、オーバーペースで自滅していたかもしれない。そこが、何十年も走りつづけてきた熟練ランナーの強みである(本当か?)。

レースは2組に分かれて行われた。いずれの組もほとんどが学生で、その中に数名の一般ランナーが混じっていた。暑さの中とはいえ、トップを行くランナーたちは積極的に飛ばし、2組とも1位の選手が他を大きく引き離す展開となった。私の方は、終盤にペースが落ちたものの想定の範囲内でゴールした。

ところで、大会の運営でロードレースと比べてトラック競技やフィールド競技が難しいのは、競技の進行次第で時間が多少前後することである。国内の主要な大会ではまずないが、それでも五輪や国際大会でもしばしば起こる。

この日は、前半の短距離種目で組数が多かったことから、進行に遅れが生じたようだ。競技開始は8時30分だったが、14時15分開始予定だった男子5000m1組ではおよそ30分を超える遅れとなった。私は、競技の開始時間よりも約90分前に会場へ着いたため、遅れの状況はすぐにはわからなかった。予定通りのアップを行って、最終コールへ向かう直前になって初めて、進行の遅れを伝える放送で気がついた。アップに入る前に、場内アナウンスに耳を傾けるなどして進行状況を確かめておけばよかったのだ。

一度できあがったコンディションを維持することはなかなか難しい。つまり、温まった身体を保持しながらスタミナの消耗を最小限に抑えなければならないからだ。また、気分的にもスタンバイできた状態をいったんクリアして、もう一度作り直す必要がある。もし、これが重要な大会であればあるほど、焦りを呼ぶことになるだろう。

集中力の密度から言えば、長距離種目よりは短距離や跳躍競技の方がよりナイーブになるのではないかと思う。こういうときは、実力以外に「いかに気持ちを切り換えるか」という胆力のようなプラスアルファーがものを言いそうである。

「気持ちの切り換え」ついては、それを専門にしている人がいる。プロ野球のリリーフエースといわれる人たちだ。彼らは1試合の中で、マウンドに上がるまでに何度も仕切り直しを行っている。マラソンのスタートのように決まった時間に号砲が鳴ることはないからだ。体のコンディショニングとともにメンタルな面での管理に人一倍心を配っているにちがいない。

このような人たちが持っているメンタル面の管理技術を、陸上競技のアスリートたちも学ぶ必要があると思う。指導にあたる監督さんたちも、ぜひ選手たちの心に入り込んで、このプラスアルファーを引き出していただきたい。大切な試合で、日頃の練習成果を十分に発揮するために。

今月下旬には陸上の世界選手権が開幕する。ライバル同士の心理戦の展開にも気を配って、レースの行方を見守りたい。
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by hasiru123 | 2015-08-16 16:36 | 基礎知識

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長い距離を効率よく走ることが疲れを知らない走りにつながる。そのためには、市民ランナーであってもランニングフォームは大切である。

ポイントは二つあって、一つ目は体幹を使って重心を前に持っていくこと、二つ目は足裏着地だ。この二つを実行することで、フォームは大きく改善し、疲労感に差が出て、故障防止につなげることが可能となる。

まず、体幹を使って重心を前に持っていくこと。「体幹を使う」とは、からだの重心は大体へその辺りにあるので、その部分を意識して前面に押し出すことである。

ランナーのからだをまっすぐに立てた1本線にたとえると、走るということは立てた線がやや前傾しながら前方に平行移動することである。このときに重心が後ろにあると、前方向にある上半身の上部(顔や胸)と下半身の下部(膝から下)が重心部分を引く形になる。重心が後からついてついていくような、ちょうど腰が引けた状態だ。走る推進力を妨げ、エネルギーのロスを生む。そして、膝への負担を大きくする。

重心を思い切って前へ出して走ってみよう。脚を前に出すのではなく、重心を前に出す。脚が自然に前へ押し出される感覚をつかみたい。

そのときに、腕振りはどうしたらいいか。よく走るときの「腕振り」というが、正確には「肘(ひじ)振り」と言った方がいい。肘を前に出すのではなく後へ引く。後へ引けば、前へ出さなくても振り子の原理で自然に肘は前へ出る。そのときに、肘と体が離れないように脇をしめることを意識すれば、バランスのいいフォームにつながるはずだ。

もう一つは、足裏着地。着地には大きく分けてつま先から着地する走り方とかかとから着地する走り方がある。着地方法が2種類あるわけではないが、説明上の典型例として挙げるとそういえるだろう。スピードランナーの中にはつま先着地の選手を見かけるが、疲労がたまりやすいため長い距離を走るには無理がある。一方、かかと着地は着地のショックを受けやすく推進力のロスとなる。理想は、土踏まずから踏み込む足裏着地である。土踏まずから入るように見えて足裏で着地するのである。

この着地法は着地したときののショックが少なく、またスピードのロスも少ない。そして、かかとから入って足裏をローリングするやり方に比べて、着地の動作時間が短く速いピッチにつながる。

体幹を使った走りと足裏着地は独立した「点」ではなく、点と点をつなげる「線」になるよう、日ごろの練習で意識することが大事である。ペースアップや走る時間の経過とともに体が忘れかけたら、思い出してほしい。

意識しなくてもできるようになれば、フォームは見違えるように改善されるはずだ。


(写真)11月16日に行われた坂戸市民チャリティマラソン3キロの部を走る中学生たち
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by hasiru123 | 2014-11-23 19:29 | 基礎知識

熱中症に強い体作り

発汗は身体から熱を奪い、体温が上昇するのを防いでくれる。しかし、発汗に使われた水分を十分に補給しないと脱水状態になり、体温調節能力や運動能力が低下する。暑いときに積極的に給水しなくてはいけない理由はここにある。

私の場合は、ランニング中の給水が苦手である。紙コップに入った水の取り方があまりうまくない。また、飲んだ後にむせたり、腹痛を起こしたりすることもある。特に飲みたいと感じなかったら、走り終わるまで我慢してしまおうと思うことが少なくない。しかし、今夏のランナーはいやが上にも給水上手にならざるを得ない。そのくらい厳しい猛暑が続いている。長時間ランニングは熱中症リスクは相当に高く、用心に越したことはない。

「熱中症は死に至る恐ろしい病気」と警鐘を鳴らすのは、神奈川県立保健福祉大学の谷口英喜教授だ。そして、「正しい予防で発生を防ぐことが可能で、万が一かかってもだ正しい対応により悪化を防ぐこともできる病気」とも言う。毎月、食品メーカーのキユーピーさんから送っていただいている「キユーピーニュース」(注)の第472号「熱中症を理解する正しい予防法と治療法」にあった。

谷口教授は、予防について外的要因と内的要因の2つの側面から解説している。

まず外的要因に対する予防では、①真夏日や猛暑日での運動や仕事は控える。天気予報などで高温注意情報を確認する。②生活・仕事をする環境を整える。熱帯夜が予想されたら過度の節電をやめるなど。③服装に注意する。外出時の服装や持ち物は十分な熱中症対策の準備をする。

内的要因に対する予防では、①熱中症に強い体作りを心がける。汗をかく練習をする(暑熱くなる前にゆっくりと体を慣れさせる)、水分を飲む練習をする(暑熱くなる前に消化機能を慣れさせる)など。②良質のタンパク質を摂り、筋肉を育てる。筋肉は水分をたくさん保持できる場所。動物性タンパク質と植物性タンパク質を適度に摂って、適度に運動をする。③夏場は夏野菜をとる。野菜からは水分やカリウムを摂取することができる。④こまめな水分と塩分の補給を心がける。アルコールを除いた飲料であれば全て効果がある。塩分は食事からもとれているが、塩分が含まれたスポーツドリンクや経口補水液を摂取するのが良い。

間違った熱中症対策として、①熱中症にならないように「塩飴」だけをなめること。血液の浸透圧が上昇して脱水症状が重症化する。たくさんの飲料といっしょに飲むことが大切。②スポーツドリンクに「熱中症対策水」、「熱中水」などと書かれた商品の表示を鵜呑みにしない。スポーツドリンクには、電解質が入っているか、100mlあたりにナトリウムが40~80mgは最低含まれているか、など表示と成分をよく確認してから飲むように、とアドバイスしている。

谷口教授は「熱中症になってしまった場合には、アルコール飲料は脱水症状を増悪させるので摂取してはいけない」とも注意を呼びかけている。それに加えさせていただくならば、大量の汗をかいたあとにアルコールを摂るのも十分な注意が必要だと思う。本来なら、少しずつ水を補給しなくてはいけないところなのに、反対に脱水を助長さることになるからだ。合宿などで、走った後に入浴してビールを飲んだら、なかなか汗が止まらなかったという苦い経験がある。

上記の内的要因の①にもあるとおり、暑さに負けない体力作りは熱中症対策の中でも特に重要だ。7月12日付毎日新聞の小島正美記者のリポートによると、「ややハードな運動の後に牛乳などを摂取すると、血液量が増えるなどの体温を調節する能力が上がり、熱中症対策にもなることが分かってきた」とあった。信州大学大学院の能勢博教授への取材で分かったことだ。真夏の運動などで大量の汗をかき、脱水症状を起こしたときは、水分と塩分を補給することがまず必要だが、それだけでは血液量は増えない。長期的に血液量を増やし、暑さに強い体力を求めるなら、ややきつい運動後に牛乳などの乳たんぱく質と糖質を含む食品を摂取する必要があるというのだ。

筋力向上と血液量の増加は、熱中症と生活習慣病の予防という一石二鳥の効果を果たすものとして、今後の調査、研究が期待できそうだ。


(注)栄養や健康の専門家による解説記事。新しい統計や実験などに基づいたデータオリエンテッドな記述は、一般の消費者だけでなく食事に気を使っているアスリートが読んでも大変参考になる。
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by hasiru123 | 2013-07-14 20:43 | 基礎知識

第25回ランニング学会大会の開催要項が発表された。テーマは「生涯スポーツとしてのランニング」。

アスリートのための専門的なテーマがあり、そして、幅広い市民ランナーに向けたセッションもある。もちろん、その中間もありだ。また、これから指導者を目指そうという若いランナーにもぜひ聞いていただきたい。その概要は以下のとおり。

会期:平成25年3月23日(土)、24日(日)
会場:東京学芸大学
大会会長  有吉正博

プログラム概要

【1日目】3月23日(土)
基調講演 <ジュニアからシニア、そしてグランドシニアへ>
  演者  有吉正博(ランニング学会会長)
招待講演 <金メダルコーチに学ぶ-日本のマラソンの現状と可能性を語る->
  演者  藤田信之(聞き手・豊岡示朗)
一般研究発表 A
パネルディスカッション <義務教育期のランニングの現状と展望>
  演者  佐藤善人、樺山洋一、 田口智洋
実技プログラム <ファンランニング>
  ①アスリートと走ろう
  ②子どもと走るには 
  ③皆で楽しく走ろう、ほか(学内コース)
  演者  有吉正博、AVRC小金井、深尾真美、大崎栄、徳本一善(未定・日程調整中)、佐藤善人
懇親会

【2日目】3月24日(日)
一般研究発表 B
シンポジウム <アスリートとしての取り組み(高強度トレーニングを考える)>
  演者  松村拓希、山中美和子(ダイハツ)、榎本靖士
キーノートレクチャー
シンポジウム <生涯を通じたランニングの楽しみ方>
  ・ジュニアアスリートからマスターアスリートまでの道  深尾真美
  ・アスリートから市民ランナーのランニングを支える  古川大輔(ミズノ)
  ・大人になってから始めたランニンング  鈴木昭典、藤牧利昭
参加費
学会員
4,000円(当日5,000円,1日のみ2,500円)
AVRC会員※1
4,000円(当日5,000円,1日のみ2,500円)
学生※2
3,000円(当日4,000円,1日のみ2,000円)
非会員
5,000円(当日6,000円,1日のみ3,000円)
※1 アミノバリューランニングクラブ、※2 非会員の学生を含む。
懇親会
1日目終了後に、懇親会を開催します。参加費は一律5,000円。
一般研究発表
発表希望の方は、メールにて演題および要旨をご連絡下さい。宛先や書式等の詳細は一般研究発表演題募集についてをご確認下さい。
参加申込および振込の締切
2月7日(木)17時 厳守
参加費振込先
  三菱東京UFJ銀行 入間支店 普通 0038679
ランニング学会大会事務局 代表 藤牧利昭
第25回ランニング学会大会事務局
〒184-8501
東京都小金井市貫井北町4-1-1
東京学芸大学 芸術・スポーツ科学系研究棟7号館 陸上競技研究室内
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by hasiru123 | 2013-02-17 23:29 | 基礎知識

1日目は、降りしきる雨の中での競技となった。この日の長距離種目の決勝は男子5000メートルと女子1万メートル。両方とも手に汗を握る見ごたえのあるレースだったが、その内容は対照的だった。

まず、男子5000メートル。参加標準記録のA突破者はなく、B突破者はいるもののこのレースには出場していない。こういう場合の上位を目指す選手たちの目標は、この大会でB標準をクリアして優勝することだろう。優勝だけを狙うという目標もありだが、4年に1回ある五輪年の日本選手権に巡り合わせたからには、何としてでも五輪の切符を手にしたいというのが本音だと思う。

ところが、このレースはあまりに消極的すぎた。高井和治(九電工)が最初の1000メートルを2分45秒で飛び出したほかは大きく遅れ、もはやこの時点でB標準超えは望み薄となった。5000メートルのB標準は13分27秒だから、トラック1周を64~65秒ペース、1000メートルを2分41~42秒ペースでカバーしなければならないはずだ。高井のぺースにしてもB標準には遠く及ばない。後続の選手たちは、明らかに記録よりも勝負に徹した戦術を採ったのである。

この日エントリーした選手には、あと数秒縮めればB標準に到達できるという選手が何名かいた。第一線の選手が集結するこの大会を利用しない手はない。何ともったいないことだろう。

それはさておき、レースの展開は面白かった。最後の1周の鐘が鳴ったときには、まだ7、8名の選手が列をなしてめまぐるしく順位が変動する展開になっていた。残り200メートルあたりから、竹澤健介(エスビー食品)が上位へ上がり、この時点で先頭グループは4名に絞られた。ラストスパートに自信をもっている竹澤は最後の直線に入る手前でトップへ出た。勝負決したかと思われた。

ところが、グループの後方についていた出口和也(旭化成)がラスト50メートルで竹澤をかわし、そのままゴール。テレビ中継の解説をしていた金哲彦氏は「切れ味というよりパワー」だと評した。最後にこんな素晴らしいしのぎ合いを見せてくれるのなら、もっと早くエンジンを始動してほしかった。

男子5000メートルのエントリーリストを見ると、20名近くの13分45秒以内の選手がしのぎを削っている様子がわかる。これらの将来性ある選手たちが失敗を恐れずに記録に向かっていけるよう、所属する大学や企業の関係者は後押しする必要がある。日本選手権の優勝にこだわりすぎる背景には、チームの成果主義が影響していると私は見る。

一方、女子1万メートルは男子とは違った面白さがあった。A標準(31分45秒)の突破者が4名いる中でレースは、勝負争いに加えて記録への期待があった。すでにA標準をクリアしている長距離第一人者の福士加代子(ワコール)とまだクリアしていない吉川美香(パナソニック)とのマッチレースとなった。結果は、9000メートルからスパートした吉川が制した。前半はA標準を大きく上回るペースで進んだが、6000メートル辺りからペースが落ち、徐々に貯金がなくなってきた。しかし、ラストの1000メートルを2分57秒、最後の1周を67秒にペースを上げたことで、31分28秒71という好タイムで初優勝を飾ることができた。

吉川の優勝の最大の貢献者は、言うまでもなく福士の積極果敢な記録への挑戦だろう。優勝さえすれば、確実に五輪出場が決まるところを、あえて記録に挑んだ福士の意気込みには敬服する。「記録はライバルがいてこそ作られるもの」だということを示したお手本のようなものだった。次は、日本からは複数の代表が参加するであろう本番での切磋琢磨に期待したい。
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by hasiru123 | 2012-06-10 23:29 | 基礎知識

 ランニングフォーラム - 若葉グリーンメイト30周年記念行事 -

1月9日(日)に、私が所属している若葉グリーンメイトの30周年記念行事「ランニングフォーラム」が坂戸市内で行われた。小会会員以外の方々を含めて70名を超えるランナーが参加した。講演とパネルディスカッションの2部構成で、続いて行われた懇親会では走ることについての話題に花が咲いた。

第1部は、矢野龍彦氏(桐朋学園大学教授)の基調講演で、テーマは「ヘルシーランニングの秘訣」。「ナンバの動きの分析」を始め「ナンバ感覚」「ナンバ的発想」、そして最後に「ナンバ式骨体操」の一部について実技指導をいただいた。骨の平行四辺形への潰し方は写真や図では何度も見ていたが、実際に見たのは初めてである。自分でも、これまでに何度となく試みてみたが、なかなか身体がついてこない。矢野氏ご自身による実演を見て、少しはイメージできるようになった気がする。
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私が身体の動きの中でナンバの動きが体感できたのは、山登りで自然に右足と右手が、左手と左手が同時に前後に動かして、身体を捻らない行動をとっていたときである。平行四辺形の潰し方を復習するときには、常に山での体験を思い出すようにしている。それでも、歩きや走りにはなかなかつながらない。
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「鍛えようという気持ちだけではつらくなり、楽しくない」。また「よけいな力が入るので、無駄が発生する」。がんばりが見えない走り、すなわち「力を抜いて、力を発揮する」ことがスポーツでは大事で、「ペース配分が求められる長距離走は楽に省エネ走るのがポイント」と強調する。

第2部はパネルディスカッションで、「地域拠点型ランニングクラブの発展を考える」というテーマだった。パネリストとして2名の識者(矢野氏と青葉昌幸氏(大東文化大学教授))と走友会で活動している3名の市民ランナーをお招きして、不肖森脇康行がモデレーターを務めさせていただいた。

ランニング愛好者が急増する中で、走友会を元気にするにはどうしたらよいか、走友会にビギナー、特に若年層や女性に多く参加してもらうにはどんな取り組みが必要か、といった喫緊の課題について語っていただいた。
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矢野氏からは「冬走って楽しいか。市民ランナーは季節を選んで行うべきだ」「誰かに会わせて走る集団練習は市民ランナーには向かない」「強化練習は個人で、ゆっくりランニングはみんなと一緒に」などの問題提起がなされた。青葉氏からは「大学チームでも集団トレーニングだけでは本番(箱根駅伝)では戦えず、個人で行う練習が大切。走友会も同様で、個人練習をしっかりできるようにすることから始まるのではないか」など百戦錬磨の名監督にしては意外とも思える個人走を意識した発言が出された。

市民ランナーのY氏は「新人には新人向けのコーチが必要で、そのためには企業、大学、走友会の共同の取り組みが必要」と訴え、U氏からは「走友会のノウハウを一般市民ランナーに伝えることは走友会の役目」という提言もあった。N氏は「会員数の増加と減少を繰り返してきたが、若い会員を主体に運営するようになって、変わった」。

さらに、矢野氏からは個人主義の米国とちがった欧州のクラブ組織にも言及があり、この辺にわが国の走友会の活性化策のヒントが隠されているような印象を持った。もう少し詳しくお話を伺いたかったところだが、時間がなかった。

短い時間の中にも関わらず建設的な発言が多く出され、大変感謝している。残念ながら、私の力量と時間の不足のために、これらの提言を十分煮詰めるには到らなかった。この部分は私たちの活動の根幹に関わることなので、消化できなかったところについては継続して取り組んでいく必要があると考えている。

なお、講演会とパネルディスカッションの詳細については、関係者の承諾を得た上で、小会のホームページに公開する予定だ。

(写真上)矢野龍彦氏の講演
(写真中)ナンバの動きの実技
(写真下)パネルディスカッション
  撮影:鈴木敏夫氏
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by hasiru123 | 2011-01-10 18:28 | 基礎知識

ランニング障害を考える

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ランナーが積極的に練習に取り組めば取り組むほど増えるのが故障である。オーバートレーニングによる疲労や誤った練習方法、処置などによる発症が多い。ランナー特有の故障は、予防策を講じることによってある程度は回避できる。また、仮に発症したとしても、適切な処置を講じれば、末長いランニング生活が約束される。今後、断続的にこのテーマに取り組んでみたい。

今回は、私の所属している若葉グリーンメイトの会員からいただいた質問について考えてみる。以下、ランニング歴5年のY会員と私とのメールのやり取りです。

Yさん.3週間前から膝が痛むようになりました。これといったきっかけはないのですが、走り出してから、20分から30分くらいすると必ずといっていいくらい痛みを感じます。ランニングは続けても大丈夫でしょうか。アドバイスいただければ幸いです。

森脇. 膝を故障したとのことです。少し旧聞に属しますが、私も92年に膝を痛めました。その経験を思い出しながら、今返信しています。いくつか質問をさせてください。

Q.膝の腫れはありますか
A.ありません。
Q.膝の動きの異常はありますか
A.ありません。
Q.お皿(膝蓋骨)の外側上方を押すと痛みがありますか
A.痛みません。
Q.走るとき以外の日常生活でも痛みがありますか
Q.長距離走った翌日などは、階段を下りるとき(膝をささえる筋肉が伸びるとき)
A.多少痛みます。昇るときは問題ありません。
Q.膝を屈伸させながらまわしたとき痛みや音がしますか
A.まわしても痛みません。前述しましたが、膝を曲げた状態から伸ばすときが問題です。
Q.WGMへ入る前と後とでは、練習量にどのくらいの違いがありましたか(例えば、月間または週間平均走行距離など)
A.10月からお世話になっていますが、月間200kmくらいだと思います。月間走行距離に大きな違いはありませんが、一人で走っていたときは10kmくらいの練習が殆どで、20kmの距離の練習を行ったり、ハーフの大会に出たりするようになったのは秋以降です。一人で走っていた時、あるいは平日に走る時はペース走(4:15-30/km)が主な練習方法です。
Q.どの時点から痛み始めたか、実感がありますか(例えば、ロードでインタバル練習を行った後に感じた、など)
A.最初は小川町のレースの10km過ぎのくだりを降りきったあたりでした。その近辺でインタバルトレーニングを始めたという事はありません。昨年の秋は、八ヶ岳、成田、上尾、小川町と4回20kmくらいのレースに出たのがむしろ問題だったのかもしれません。

森脇.膝を痛めたということで、何日も運動しないと返って筋肉や間接が固まってしまうように感じます。むしろ自転車に乗って会社にいくとか(10kmくらい)とか軽いジョグをしてやったほうが症状は軽減されるようです。また、プールを使える環境があるようでしたら、水泳や水中歩行などを行えば、膝へ負担をかけないで一定程度の負荷をかけた運動を行うことができます。しばらく、様子を見てください。
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by hasiru123 | 2010-09-26 23:41 | 基礎知識

今週の9月8日から22日までが、ニ十四節季の「白露(はくろ)」である。中国の史書には「涼風至り、白露降る」と記されている。厳しい残暑が続いているが、早朝の日差しは幾分和らいできたように感じる。朝のランニングでかく汗も少しずつ減ってきた。

この夏の気象条件が影響してか、9月に入ってもなかなか距離を伸ばせないでいる。きっと、今年の秋以降のフルマラソンを目指しているランナーにとっては早く本来の秋らしい気温に戻ってほしいと願っているに違いない。というのは、夏から秋にかけての練習量がその年のマラソンシーズンの結果に大きく影響するからだ。猛暑のために走り込みが不足しているとしたら、数ヵ月後のマラソンの記録の低下は避けられない。

雑誌「ランナーズ」によると、2009年度に走った男子約13万7千人の平均タイムは4時間35分04秒で、同女子約2万9千人は5時間07分35秒だったそうだ。果たして今年度はどのくらいの平均タイムになるだろうか。

さて、同じ「ランナーズ」であるが、直近の10月号の別冊付録に「初マラソン!!完走法が学べるトレーニング手帳」というのがある。付録とはいえ(いや、だからこそというべきかもしれないが)、大変わかりやすく書かれていて、楽しく読める内容になっている。「初マラソン」と銘打ってはいるが、熟年ランナーにとっても学ぶところが多い。

同書の最大の特徴は、見開きの左側のページ横に15日分の日記がついていることだ。記載するのは「距離」「点数」「体調」の3つ。「距離」は走行距離、「点数」はその日、ランナーとして望ましい日1日を送れたかを100点満点で記入する。「体調」は5点満点で記入して、適正練習量を把握するようになっている。練習日誌をつける習慣を持っていない人には、いいチャンスである。  
      
同書には、「初マラソンを歩かず完走」を芽音テーマに、必要なトレーニング方法が平易に書かれている。今シーズンのマラソンのよきバイブルとなることを期待したい。
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by hasiru123 | 2010-09-12 23:43 | 基礎知識