夢のマラソン

<   2006年 06月 ( 3 )   > この月の画像一覧

クロカン(3)

  走る技術 

c0051032_20223581.jpg

クロカンを走るときにはどのようなことに気をつければよいでしょうか。

<練習のスタイル>
一つは、やわらかい地形を生かして「LSDとして走る」方法があります。トラックの周回コースやロードでのブロック単位の周回と異なり、自然の変化に富んでいますから飽きることがありません。アップダウンがあるので、ペースを上げなくても心肺機能に負荷がかかり、平地で行うLSD以上に心肺機能の強化を図ることが可能です。練習後でも、平地でのスピード練習に比べて疲労感が残りにくい特徴があります。

二つ目は、 「ビルドアップ的に走る」方法です。平地に比べて、わずかのビルドアップでも心肺機能に負荷がかかりますから、調子の引き上げを図りながら心肺機能の強化をねらった練習を兼ねることができます。

いずれにしても、自然の地形の中で走るため、厳密なタイム管理には不向きです。タイムやペースを気にしないで気楽に走りましょう。クロカンは、マラソンの走り込み初期やトラックシーズイン前の基礎練習期などで、タイムを気にしないでじっくり走る練習に向いています。

<クロカンの走り方>
上りと下りとでは、走法が大きく異なります。そこには、100メートル走と5000メートル走、あるいは野球とサッカーに匹敵するほどの違いがあります。その違いは以下のとおりです。

①上り
・腕振りを大きくする。意識してひじを後へ引くのがポイント。前へ出すのとは反対の動きをとる――腕を前へ出すとバランスを崩し、前へ進む推進力を妨げる
・踵を大臀筋の方へ引きつけながら大腿を上げる――踵をひきつけることによって自然に膝が上がる。意識して膝を上げようとしないことが大切
・ストライドを小さくして確実に前へ足を進める――勾配が大きくなるにしたがってストライドが小さくなるのは自然の働きで、無理をしてストライドを大きくしない。小さいほど、少ない負荷で前進することができる
・着地したときに腰が落ちないよう、腰高を意識する――そのためには腹筋力が必要だが、クロカンを行うことによって腹筋力がつくという逆効果もある

②下り
・足の裏全体に体重をかけ、足の裏全体で蹴る
・着地からキックまでを、膝のばねを利かしながら進めていく――疲労してくると膝のばねが利かなくなるので、無理をしてスピードを上げない
・加速をコントロールしないと走力を越えたスピードとなり、バランスをこわしやすい――加速をしなくてもスピードを体感できるというメリットとのトレードオフの関係である
・加速を抑えすぎると膝に負担がかかるとともに、スピード効率を落とす(故障を招きやすい)――加速をコントロールするのは難しい。クロカンやトレイルランでの故障のほとんどは下りで起こっている
・ストライドは自然と大きくなるが、大きすぎないよう注意を(意識しないと大きくなり、バランスをこわす)

<上りに強い人と下りに強い人>
このような上りと下りの走法の違いから、ランナーには上りを得意とする人と苦手とする人に分かれます。上りを得意とする人の多くは下りを苦手とする傾向があります。上りが苦手の人は、その反対に下りを得意とする傾向が見られます。

上りを得意とする人はピッチ走法でスタミナ型、マラソン選手に多く見られるタイプです。練習の工夫と努力で、不得意を得意に買えることが可能です。下りを得意とする人はストライド走法でスピード型、トラック(特に中距離)選手に見られるタイプです。からだの柔軟性や持っているセンスも関係するため、誰でも努力すれば得意科目になるとは言いがたいものがあります。下りだけのコースを使用したレースはあまりありませんから、下りを集中的に走ることは避けたほうがいいと思います。箱根駅伝で、山上り(5区)で活躍した選手や山下り(6区)で活躍した選手の、大学卒業後の実績を追ってみると、そのような傾向が見てとれます。

<クロカンを走るときの注意点>
大きな集団で走ると足元の段差などに気づかないで、転倒したり、捻挫したりする故障の危険があります。一方では、一人で走ることは、コースをよく知らないと、途中で道に迷い、遭難とまではいかなくとも、後戻りしたり、道を探したりで、練習が中断されることが考えられます。クロカンは、数人程度の少人数で行うのが安全かつ練習効果が高いと思います。
[PR]
by hasiru123 | 2006-06-25 20:24 | 練習

クロカン(2)

  クロカンの効用

c0051032_2157139.jpg

                           鈴木敏夫氏写す
クロカンで得られる練習効果には、どのようなものがあるでしょうか。不整地やアップダウンを走ることによって、ランニングに必要なオールラウンドなからだをつくることができます。

<クロカンだから実現できる>
クロカンの第一のメリットは、土の上を走るから、「足にやさしい」ということが挙げられます。クロカンレースで使う専用コースには、トラックのように厳密な基準はないと思います。もし、私がクロカンコースとしての必要条件を設定するとすれば、「①未舗装部分がコース全体の20パーセント以内(土の部分が80パーセント以上)であること」と「②一定以上の高低差があること」そして「③コースの半分以上は木々に覆われた林間コースであること」の3つを挙げます。特に①は限りなく0パーセントに近いことを希望します。それらの条件には、次のような効用があるからです。

・地面がやわらかいと思い切り走れるので、状態がリラックスする(ストレッチ効果)――自然の地形を利用してスピードの強弱をつけられるので、無理してペースを上げる必要がない。また、腰のまわりの筋肉がよく伸びるので、脚の筋肉や腱もしっかりストレッチされる。意識すれば、地形の変化に対応したランニング・フォームを身につけることができ、フォーム改善に絶好の機会となる。

・下り坂での動きは自然に脚の回転をよくする(ストライドを伸ばす効果)――舗装道路では脚にかかる衝撃が強いので、このような練習には向かない

・からだ全体への負荷がかかる(バランス効果)――走った後の疲れはあっても、ハムストリングが痛いとか、アキレス腱が張るとかといった、個別の痛みよりは、全身で感じる疲労感が強い。このよう感覚はほかのスポーツで経験したことがない。

<新しいランニングの世界へつなげる>
クロカンには次のような複合効果があります。

・山岳ランニングやマラソンへの橋渡しができる――アップダウンの繰り返しを走ることによって、心肺機能を高め、脚筋力の強化が図れる。また、自然に坂道での走りを覚える。

・トラックレースへのステップとして活用――ペースの変化に対応するランニング・リズムや呼吸法を体得できる。また、スピードとパワーと筋持久力を同時に養成できる。

<リラックス>
身体的効果に加えて、心の安らぎを体感することができます。LSDとして走れば、いっそう効果を増します。 

・身体はくたくた、気持ちはさわやか(森林浴効果(注))――森林の中を走ることによって心身ともにリフレッシュできる。

・心理的にリラックスした状態でからだを追い込める(ストレスの解消とトレーニングの相乗効果)――インターバルトレーニングやロードでの走りこみは、身体的な負荷が高いのと同時にタイムにこだわることによって、精神的なプレッシャーを生むことがある。クロカンの場合には、肉体的な疲労感は大きいが、心理的には余裕がある。

(注)森林中に植物が発散する「フィトンチッド」には肝機能を活性化させ、香りの清涼感、生理機能の促進などの効能がある。「森林の香り」「木の香り」がこれにあたる。詳しく知りたい方は、フィトンチッド普及協会のホームページをごらんください。
[PR]
by hasiru123 | 2006-06-18 21:59 | 練習

クロカン(1)


c0051032_17275135.jpg

                急斜面を駆け上がる=鈴木敏夫氏写す

7ヶ月ぶりに、森林公園クロカンコース(埼玉県比企郡滑川町にある武蔵丘陵森林公園)で練習を行いました。

コースからは、アヤメやショウブなどの初夏の草花が見られ、若葉と見事にマッチしていました。残念ながらアジサイは見られませんでしたが。

練習内容は、このコースの定番で、約5.5キロのクロカン専用コースをビルドアップ(注)的に周回(2~4周)しました。途中20メートル前後のアップダウンを含めて、コースのほとんどが起伏のあるコースです。森林公園のクロカンコースのいいところは、そのほとんどが林の中ですから、夏は日差しをさえぎってくれますし、冬は風よけになることです。

「クロカン」には、スキーを使ったクロカン、パラグライダーを使ったクロカン、自転車によるクロカンなど、いろいろなクロカンがありますが、ここでは走るクロカンです。「クロスカントリー・ランニング」のことを略して「クロカン走」「XC走」などといいますが、厳密な定義はありません。「トレイル・ランニング」「ヒル・トレイニング」「不整地走」や「起伏走」とほぼ同義です。私が高校生のときに読んだ陸上競技のテキストでは「断郊走」と書かれていましたが、現在では「クロスカントリー」という表現が定着しています。

欧米では、トラックシーズンが終わり、雪が降るまでの間や、春のトラックシーズンに入る前の時期にはクロスカントリー・レースが各地で開かれます。イギリスに駐在している方が書いているブログを見ていたら、イギリスの子供たちはズブズブの芝生の中で毎週のように野山を走るマラソンを楽しんでいる記事に出会いました。そういえば、今年見た映画「リトルランナー」でもカナダのカトリック学校に通う少年がクロスカントリー部で走る場面がありました。

長距離走やマラソンおけるクロカンの重要性は認識されつつも、まだその取り組みは少なく、人気もいまひとつという感じがします。このたびの練習会では、私は1周目の前半だけ先頭を走ったのですが、何度となく蜘蛛の糸にひっかかりました(つまり、最近そのコースに足を踏み入れた人が少ないということ)。こんなにいいコースなのに活用されていないのは残念です。日本では先ごろ、世界クロスカントリー選手権福岡大会が開かれました。これを機に、「クロカン」の認知度が高まることを期待しています。

クロカンの走り方やその練習効果、楽しみ方などについて書いてみたいと思います。


(注)ビルドアップ走: 時間をかけて少しずつスピードを上げていく走り方。いきなりペースアップさせないで、余裕のあるスピードから初めて、段階的に上げていくが、オールアウトまでがんばらないのがポイント。調子の引き上げや体調のチェックなどに使うことが多い。
[PR]
by hasiru123 | 2006-06-11 17:38 | 練習