箱根駅伝戦国時代

駅伝大会の中で特に興味を惹くのは、学校や企業の対抗戦です。今年行われた箱根駅伝や全日本実業団対抗女子駅伝はその際たるものでしょう。箱根駅伝では、終盤でトップ争いをしていた強豪チームが軒並みアクシデントで潰れ、想定外の亜細亜大が逆転初優勝を飾りました。実業団女子駅伝では、38歳のベテラン弘山晴美(資生堂)と19歳の大崎千聖(三井住友海上)とのアンカー勝負となり、接戦の末弘山が制しました。弘山を擁しての資生堂初優勝はとても感動的でしたし、ルーキー大崎の物怖じしない走りには大器の片鱗を感じます。

これらの対抗駅伝は、それぞれの選手が所属している組織の看板を背負っての戦いであるだけに、真剣そのものです。ときとして、その看板の重みに耐えかねて「ブレーキ」と呼ばれるアクシデントに見舞われることもあります。茶の間の駅伝ファンの心を暑く焦がすのもこの辺の事情があると思います。

07年正月の箱根駅伝がもうすぐやってきます。今年は、昨年と同様に東海大順天堂大が優勝候補と目されています。前評判や選手の名前から見ると、私も何となくそんな気がしてきました。10000mの平均タイムでは、順大が29分00秒6で抜きん出ていて、日体大東洋大と続きます。しかし、この持ちタイムはあまり当てになりません。前回の結果を見るまでもなく、各校の力の差は接近していると思います。

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どこが勝つか予想がつかない、まさしく戦国時代です。持てる力をしっかり出した学校に勝利の女神が輝くとしか言いようがありません。優勝圏内にあるチームは同じ鉄は踏まないと思います。選手たちの心のケアにまで踏み込んで、リスク管理を徹底するものと思われます。今度は、「シンジラレナーイ」ことは起きないと信じたい。

優勝の行方はさておき、私が注目するのは久しぶりに国内選手が区間賞争いをリードしそうな期待が持てることです。というのは、今年の5000mランキング10傑に4人の学生が顔を出し、しかも上位を占めているからです。竹澤健介(早大)が13分22秒36、佐藤悠基(東海大)が13分23秒57でともに2年生。これらの記録は、学生歴代ランキングとしては高岡寿成の持つ13分20秒43に次ぐものです。M.J.モグス(山梨学大)やG.ダニエル(日大)との争いが大変楽しみです。また、5区の山登りでは今年も今井正人(順大)が4回目の挑戦となると思われますが、先回の区間記録に期待がかかります。

箱根駅伝のムックというと、『箱根駅伝公式ガイドブック』(講談社)と『箱根駅伝200X』(ベースボールマガジン社)が定番でしたが、今年は新たに宝島社から『箱根駅伝伝説』が、昭文社からは『箱根駅伝まるごとガイド』というコースの詳細な地図帳が出版されました。「読売ウイークリー」でも箱根駅伝の特集を組んでいます。『箱根駅伝公式ガイドブック』では毎年関東学連の執行部の方々による座談会を組んでいて、大会運営の裏話が聞けます。私は、今年もこれを手にしました。
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by hasiru123 | 2006-12-29 19:35 | 駅伝

    炭水化物

炭水化物は、脂肪、たんぱく質とともに3大栄養素の一つで、体内で消化吸収されるとグリコーゲンに転換されます。グリコーゲンは肝臓と筋肉に貯えられていて、走るために最も基本的な燃料となるものです。フルマラソンの30K以降で突然力が抜けて走れなくなる現象に見舞われるのは、このグリコーゲンが枯渇してしまうことによります。

また、フルマラソンの走りこみを開始した当初は、ゆっくりでも40K以上の距離を走りとおせるスタミナがないため、25Kあたりを過ぎると空腹感を覚えて、次第に走る力がなくなってしまうことがよくありました。長い距離の練習と繰り返していく過程で、空腹を感じる地点が少しずつ先になり、マラソンのレースが近くなるころには40キロを過ぎても苦しまずに走れるようになるのです。これは練習効果で、グリコーゲンが枯渇状態になる地点が、徐々に後へ移動していくからだと理解すればいいと思います。

ランニングを行うと、体外から吸収した酸素を使ってグリコーゲンを燃やし、走るためのエネルギーに変えます。すなわち、
「走るためのエネルギー=グリコーゲン+酸素」
です。「脂肪も走りのエネルギーになるが、脂肪には脳へのエネルギー回路がなく、グリコーゲンしか脳に入らない。フルマラソンで足が前へ出なくなるのは、足の筋肉疲労ではなく、脳内のグリコーゲン不足で筋肉への神経回路が乱れてしまったためだ」と新赤坂クリニック院長の松木康夫さんは説明しています(『最新ランニング技術百科』学習研究社から)。脂肪はふつう、フルマラソンを完走した後もお釣りがくるくらいの十分な体脂肪として貯えられています。したがって、食事の中で意識して摂る必要はありません。ところが、グリコーゲンの基となる炭水化物は貯蔵に限界があるので、レースだけでなくふだんの練習の中でも、しっかり補給しておく必要があります。

それでは、炭水化物をうまく摂るどんな食事がいいのでしょうか。レースの直前とふだんの食生活とでは多少異なります。レースの前日や当日であれば、米やバナナ、パスタなど消化のいい炭水化物が必要です。ふだんの生活では、米を中心にいろいろな炭水化物を組み合わせて摂るのがいいと思います。そして、走りが生活の一部となっているランナーであれば、ぜひ栄養的に優れた炭水化物を多く摂ってほしいものです。

例えば、米はできることなら、というよりもぜひ精製された白米ではなく「玄米」や「胚芽米」を摂ってほしいと松木さんは言います。「白米ですと、玄米から種皮や胚芽を取り除いてしまったものですから、お米が本来もっている貴重な栄養は失われているのです」。このエネルギー源に注目して実践している日本のトップランナーも多いと聞きます。

ちなみに、胚芽米に含まれている栄養素には粗たんぱく、粗米ぬか油、ビタミンB1・B2・B6・E、ニコチン酸、パントテン酸、葉酸などがあります。特にビタミンB1は白米にはほとんど含まれていなくて、しかもグリコーゲンをエネルギーに変える酵素を多く含んでいます。このような貴重な栄養素をみすみす捨てる手はないと思います。

日本人はもともと炭水化物を多く摂っています。平成15年の国民健康栄養調査によると、エネルギーの栄養素別摂取構成比は「たんぱく質15,脂肪25、炭水化物60」と報告されています。ランナーの栄養摂取の理想は、「たんぱく質10,脂肪20、炭水化物70」といわれていますので、日本人の平均的な食生活にかなり近いといえます。それに対して、欧米諸国では脂肪が4割を超える脂質過多の状況です。日本はマラソンにふさわしい食生活環境にあるといえるでしょう。
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by hasiru123 | 2006-12-28 07:37 | その他

   食事バランス再考

「しっかり走るための栄養とは何か(1)」で、ランナーには「食事の栄養バランスが大事だ」と書いたところ、小ブログをご覧になった方からこんな反論をいただきました。「栄養バランスが大切なことはよくわかるが、そのためにはどのような食事をすればよいのでしょうか。言葉だけで、生活の中でうまく生かせないのではあまり意味がないように思うのですが・・・」

大変難しい問題で、栄養の専門家でない私が簡単に説明できるとは思えません。実のところ、理想的な栄養バランスがとれた食生活についてしっかりした解決策を提示できる医師や栄養士はいないのではないでしょうか。消化機能の個人差、そのときの心理状態、食事の雰囲気などを無視して、現在わかっている範囲での必要な栄養素についての量的なバランスであれば、詳細なデータを作ることはできると思います。しかし、そのようなバランス指標を得られたとしても、実行することにそれほど価値のあることとは思えません。

でも、専門家でない人でもできることがあります。私は次の3つを、栄養バランスの基本として挙げたいと思います。そして心がけています。1つ目は、炭水化物やたんぱく質、脂肪のそれぞれについて偏った食事をしない。同じものを続けて摂らないことです。たとえば、ラーメンを昼と夜続けるとか、たんぱく質はいつも肉ばかり、など。

2つ目は、食事は毎日朝昼晩と3回摂る。2回でも種類を多くすればいいように思えますが、多くの栄養素を摂ろうとするあまり副食を摂りすぎて、結果的にカロリー過多になりやすいのが欠点です。

3つ目は、加工度の高い食品よりも素材をすべて食べ尽くすことを心がける。例えば、鮭の場合に切り身だけでなく、頭から尻尾までを調理していろいろな部分をあますことなく食べることによって、自然に多くの栄養素を摂ることができます。素材の一部しか食べないなんてもったいない。

管理栄養士の幕内秀夫さんは「体によい食事10箇条」として、以下の10項目を挙げています。優先順位がポイントで、「大切な順番で書いた」と著書『体によい食事ダメな食事』にあります。
 ①ご飯をきちんと食べる
 ②朝食は「ご飯、みそ汁、漬物」
 ③カタカナ主食は日曜日
 ④液体でカロリーをとらない
 ⑤ご飯は未精製の穀類
 ⑥副食は季節の野菜を中心にする
 ⑦動物性食品魚介類を中心に
 ⑧砂糖、油脂類のとりすぎに注意
 ⑨できる限り、安全な食品を選ぶ
 ⑩食事はゆっくりと、よくかんで
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by hasiru123 | 2006-12-17 20:09 | その他

二つのマラソン

21世紀の日本のマラソンは2人の男女ランナーによって幕開けしました。女子はシドニー五輪で金メダルを獲得した高橋尚子選手(ファイテン)、男子はシドニー五輪には出場できなかったものの、同年の福岡国際を日本最高記録(当時)で制した藤田敦史選手(富士通)です。その2人が北京五輪へ向けて、それぞれ東京国際女子(11月19日)と福岡国際(12月3日)を闘いました。

高橋選手は、03年に東京国際女子でアテネ五輪を賭けて臨みましたが終盤に失速して2位に終わり、結果的に五輪選考から漏れました。昨年は同大会に故障をおして出場しましたが、このときは不安をうち消す素晴らしい快走を見せてくれました。

今年は、高橋選手と土佐礼子選手(三井住友海上)とが激突しました。土佐選手の好調さを証明するかのように、スタートからマイペースで、相手を気にせず自分のレースを展開しました。折り返し後、二人の一騎打ちとなり、31キロすぎに土佐がペースを上げ、高橋が失速。土佐の独走態勢となり、そのまま1位でゴール。高橋は39キロ付近で尾崎朱美(資生堂)にも抜かれ3位に終わりました。

藤田選手は、2000年にシドニー五輪選考会・びわ湖毎日マラソン前に右足甲を疲労骨折して断念しましたが、その年の福岡国際マラソンでみごと優勝。シドニー五輪金メダリストのG・アベラを振り切り、2時間6分51秒の日本最高をうち立てています。学生時代(駒沢大学)から1000キロを超える豊富な練習量で、マラソンで必要なスタミナを磨いてきました。しかし練習の虫の藤田には故障という魔物が常につきまとい、00年の福岡以後は2時間9分台が一度あるだけで、結果を出せないでいます。

今年の福岡は昨年に続いて晴天に恵まれず、気温7.4度と真冬並みコンディションの中でのレースでした。優勝候補のゲブレシラシエ選手(エチオピア)が20キロあたりからペースアップすると、藤田選手の表情は険しくなり、次第にトップ集団から脱落しました。結果は、2時間11分50秒の8位に甘んじました。練習は順調だったと聞いていましたので、この失速は何故だろうという思いが強くします。藤田を指導する福島監督(富士通)によれば、「調整練習段階での疲労が抜けきらなかったのが原因でした。日本記録を樹立した2000年時とほぼ同じトレーニングを消化できていた」(富士通のホームページ)といいますから、力が落ちたということではないようです。

高橋選手と藤田選手は、ともに鋭いギア・チェンジと勝負強さを持っている点で共通するところがあります。高橋は来夏世界選手権を再度狙うかどうかについては「チームQのスタッフ内で意見が二分」(11月20日共同)していて、検討中とのことです。藤田は、駅伝を経て一から身体作りに取り組むものと思われます。いづれにしても、00年を制した二人のランナーには、まだチャンスは十分にあります。08年に向けて、慎重かつ大胆に、そして故障とうまくつき合いながら挑戦してほしいと願っています。
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by hasiru123 | 2006-12-09 15:54 | 話題