<   2007年 01月 ( 3 )   > この月の画像一覧

駅伝はこれでいいということがない  07年箱根駅伝(3)

<区間による実力のバラツキ>

区間 ハーフマラソンのベスト記録平均 同標準偏差 順位差の標準偏差
2区     1:03:15            0:00:44   5.3
1区     1:04:03            0:00:54   6.4
3区     1:04:03            0:01:00   6.1
9区     1:04:05            0:01:11   3.8
5区     1:04:29            0:01:10   6.8
10区     1:04:32            0:01:26  6.1
7区     1:04:40            0:01:04   6.6
4区  1:04:57            0:01:14   7.6
6区     1:05:01            0:01:06   8.3
8区     1:05:09            0:01:26   6.2

ハーフのベスト記録平均がいい区間ほど標準偏差が小さい傾向が見られます(2、1、3区)。これらの区間では、どのチームもスピードランナーを投入し、高いレベルでの競合になっていることがわかります。また、復路(特に8、9、10区)の勝負どころで標準偏差が大きいのですが、ここではどうしても力のある選手を使えるチームとそうでないチームとの格差が出てしまい、興味深いものがあります。

ハーフの順位差の標準偏差では、8、9、10区が小さい。これは、安定して実力を発揮できる上級生ランナーが配置されている影響かと考えられます。また、5区と6区で大きいのは、フラットなコースの記録だけでは坂道コースにおける選手の適性は計れないということではないでしょうか。

<まとめ>

戦前では、各チームの力が接近していて「戦国時代」といわれていましたが、結果は思った以上に力の差が開きました。それは、持てる力を十分に発揮できた選手とそうでない選手とのバラツキが大きいためで、本番を戦うことの難しさを教えてくれたように思います。苦杯をなめたチームは、潜在的な力を持っていながら、なぜパフォーマンスを発揮することができなかったのか、これから1年間かけてじっくり取り組んでいただきたい。そして、今回の結果は前向きに自分自身を評価してほしいと思います。

選手の力を総合して結果を出す駅伝では、これでいいということがない過酷な競技です。それでいて、上を向いたらきりがない。選手のみなさんは全力で戦ったことを評価し、いっときは休息を与え、そして静かに鋭気を養うことも大切だと思います。優勝候補の筆頭に上げられていた亜大は往路、復路ともいいところがなく10位に沈みました。往路では14位まで落ちた中大は、何とか8位に食い込みました。これらのチームは、シード権をキープしただけ運があったと考えるべきでしょう。「腐っても鯛」ではありませんが、7区以降の粘りは絶対にシード落ちだけはしたくないという執念があったように思います。伊達に伝統校の名前がついていたのではなかったことを証明してくれました。また、2年連続で11位だった城西大はシード権の壁をいやおうなく知らされたわけですが、シード落ちしたチームではナンバーワンの力があることの証ですので、来年は優勝争いに絡む気持ちで、自信を持って次の予選会に臨んでほしいものです。

* ハーフマラソンの記録は「箱根駅伝公式ガイドブック」(講談社)を使用した。ハーフマラソンの記録のない選手は、同書の10000Mの記録から「(10000Mの記録×2)+4分」で試算した。
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by hasiru123 | 2007-01-27 22:37 | 駅伝

プラスアルファーを引き出す  07年箱根駅伝(2)

<ハーフ順位のベスト記録の区間ランキングと区間順位の差>

ハーフマラソンのベスト記録の区間ランキングと今回の区間順位との差を出してみました。例えば、山梨学院大のモグスはハーフマラソンのベスト記録は2区の20人の選手中2番目で、今回は区間7位でした。したがってその差は「2-7=―5」という具合です。プラスが大きければそれだけ敢闘したといえるし、マイナスが大きければブレーキだったことになります。ただし、数値を評価するうえで注意が必要なのは、区間ランキングが上位の選手はどんなに頑張っても大きなプラスにならず、反対に区間ランキングが下位の選手は大ブレーキでも大きなマイナスにはならないということです。個人別に見ると、以下のケースで大きなプラスとなっていました。

順位差 選手名
+15 佐藤(順大4区)
+14 高井(駒大4区)
+14 尾龍(明大5区)
+14 末吉(日大6区)
+14 井野(順大7区)
+14 竹下(日体大8区)

順大の佐藤は、ハーフマラソンの記録が1:06:05の区間ランキング16位で、箱根駅伝での区間順位が1位だったため「+15」となっていますが、5000Mを13:39:87、10000Mを28:10:32で走るトップクラスのスピードランナーです。ハーフの記録は異常値といえるくらい悪かったのです。また、10位まで入ったチーム別(10名の合計)に見ると以下のようになりました。

順位 チーム名 順位差 
1  順大    +50
2  日大     +1
3  東海大  -26
4  日体大  +57
5  東洋大  +43
6  早大    +19
7  駒大    +39
8  中大    +15
9  専大    +38
10  亜大    -56
- - - - -

順大は合計+50で、順位差がマイナスだった選手は1人しかいません。しかも、+14が佐藤を含めて2人いました。これだけ実力プラスアルファーが出せれば強いはずです。上位10チームでマイナスとなったのは東海大と亜大の2校しかありません。プラスアルファーが出せないチームはシード権確保(10位以内)が困難であることを語っています。

大誤算は亜大。想定外の活躍(?)は日体大。日大と東海大は実力どおりというところでしょうか。東海大は3区と5区、6区のブレーキが響きました。ハーフの記録では区間ランキング3位ですが、力を出し切れず、優勝争いに絡めませんでした。駒大、中大、専大は終盤の激しいシード争いをしのぎ、ハーフの記録からはシード落ちしても不思議ではないところを、古豪の意地を見せました。
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by hasiru123 | 2007-01-27 22:08 | 駅伝

チームの戦略  07年箱根駅伝(1)

根駅伝は、順大が出場50回目の節目で往路、復路とも完全優勝しました。順大は5区で3年連続区間新の快走を見せた今井を除いてスター選手はいませんが、それぞれの持ち場で確実な走りを見せ、4連勝したときの駒大を思わせる強さを感じました。

レース結果については、下記のサイトをごらんください。
箱根駅伝総合記録 
→ http://www.yomiuri.co.jp/sports/ekiden2007/kiroku.htm

「駅伝は水物」とよくいわれます。順大のように各選手が持てる力を十分に発揮できたチームは少なく、駅伝には必ずと言っていいくらい「誤算」がつきまといます。故障や体調不良、焦りなどいろいろな要素が絡み合い、監督の計算どおりには行きません。昨年の順大は首位を走っていた8区の難波が脱水症状を起こし、あわや途中棄権かと危ぶまれたアクシデントが発生。選手が持っている走力と本番の結果との間にはどのような関係があるのでしょうか。ハーフマラソンの持ちタイムを使って、分析を試みました。

使用したデータは今回の成績(総合順位と区間順位)と、ハーフマラソンのベスト記録とその区間でのランキング(個人別とチーム計)です。また、指標としては順位や記録の平均値だけでなく、バラツキを数値で把握するために標準偏差を使いました。

<区間ごとのハーフマラソンのベスト記録を比較すると>

以下の記録は、20チームの区間ごとにハーフマラソンのベスト記録を平均した結果です。

2区  1:03:15
1区  1:04:03
3区 1:04:03
9区  1:04:05 
5区  1:04:29  
10区 1:04:32 
7区  1:04:40  
4区  1:04:57  
6区  1:05:01  
8区  1:05:09  

20チームの平均では、2区が1:03:15ともっとも記録がよく、「花の2区」であることを裏付けています。1区と3区が同タイムの1:04:03と続きます。このことから、各チームが重視する区間として実力のある選手を投入するのは、「花の2区」以外ではスタートダッシュを期待する1区と2区の勢いをそのままつなげるための3区であることがわかりました。前半で好位置をキープして復路につなげる戦略が見てとれます。

最も長い距離の5区(23.4キロ)が1:04:29で5番目だったのは意外ですが、山上りというコースの特徴をから、選手の適性を考慮しての配置だと思われます。6区の山下りについても同様のことが言えるでしょう。

復路では、終盤の9区と10区に厚い布陣が敷かれていることがわかります。全体としていえることは、往路重視の傾向です。しかし、チーム別にハーフマラソンのベスト記録を比較してみると、一様ではありません。たとえば、集計結果から上位10チームについて特徴をあげると以下のようになります。

1位順大   5区と後半重視
2位日大   1,2,3区の前半重視
3位東海大  前半逃げ切り型(結果は3,5区が誤算)
4位日体大  前半重視(強豪が力を入れる9,10区が弱い)
5位東洋大  後半と1,2区重視
6位早大   前半と9,10区重視
7位駒大   後半(9,10区)重視
8位中大   前半と10区重視
9位専大   1区の勢いをつなげる
10位城西大 後半重視(ハーフ02分台を3人起用)

前半重視が6チーム、後半重視が4チーム。優勝した順大は後者だが、5区にスーパーエースを投入できたことにより、往路でも前半に主力を投入した他チームを圧倒しました。
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by hasiru123 | 2007-01-27 22:05 | 駅伝