夢のマラソン

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荒れるクロカンコース

先ごろ、国営武蔵丘陵森林公園(埼玉県滑川町)のクロスカントリーコースを走った。公園特設のこのコースでの練習は2年ぶりのことである。

草むらは露をたっぷり含んでいて、走り出してすぐにシューズがびっしょりになった。1周目はコースを思い出すようにゆっくりと、2周目以降は周回を重ねるごとにペースを上げていった。周りは深閑としていて、聞こえるのは1つがいのうぐいすの鳴き声だけ。

途中で出会ったランナーは1人だけだった。最近は、このコースが積極的に利用されていないようである。シューズで踏み固まられたトレースが少なく、走路が笹の葉や夏草で覆われているのだ。練習の開始早々気がついたのはこのことだった。

クロカンコースがこのように荒れるようになったのはなぜだろうか。すぐに頭に浮かんだのは、最近の日本の長距離陣が元気をなくしていることだった。コースを利用する高校生や大学生が減ったためではないかと。クロスカントリーは、筋持久力とスピードの両方を養成するのにうってつけのトレーニングである。クロスカントリーの強い国はおしなべてトラック種目も強い傾向があるからだ。

もう一つ思い浮かんだのは、公園の維持管理予算が削減されたためではないかということだった。草が伸び放題なのはクロカンコースだけでなく、随所に見られたからである。早速、公園を管理している国土交通省の関東地方整備局のデータにあたってみた。毎年公表されている「事業の概要」によると、役務等が含まれていると思われる「維持管理費」が平成20年度以降毎年減少していて、25年度は20年度のおよそ6割にまで落ち込んでいることがわかった。維持費の減少割合は国家予算の減少とほぼ同じ傾向が見られた。

私見では、クロカンコースの荒廃にはおそらく両方の要因が効いていると思われる。利用者の減少と予算の減少。長距離陣の復活を願う立場から言わせていただくと、クロカンコースの廃止という事態にならないよう、コースに雑草が生えないように積極的に活用する(=走る)しかないのではないか。     
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by hasiru123 | 2013-06-30 23:00 | 練習

チャグチャグ馬コ

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盛岡市で開催された伊藤若冲展を観たついでに市内をいろいろと散策してきた。中でも幸運だったのは、旅行最後の6月8日(土)に盛岡地方の代表的な祭りであるチャグチャグ馬コを見ることができたことだ。現在は毎年6月第2土曜日に行われる「蒼前様」を信仰とする祭りで、約100頭の馬が、岩手県滝沢村の蒼前神社から盛岡市の八幡宮まで約13キロの道のりを行進する。
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岩手県は古くから馬の産地として知られ、平安時代に編纂されたとされる法令集「類聚三代格」には、弘仁6年(815年)に中納言右近衛大将巨勢野足の奏上文として「軍団の用は馬より先なるはなし。面して権貴の使、富豪の民、互に相往来して搜求絶ゆるなし」の記述が見られる。このことから、この時代には馬は軍馬として使われていたことがうかがわれる。後に、農耕や物資運搬の役割を担い、農民と馬は深いつながりを持つようになる。人と馬が同一家屋に住む「南部曲り家」が発達するようになったのはこのような縁からだそうだ。チャグチャグ馬コは、農民による馬体安全を祈願する蒼前詣が起源だったのだ。
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なぜ、「チャグチャグ馬コ」と呼ばれるようになったのか。地元の人に聞いたら、馬のはなやかな衣装とたくさんの鈴を身に付け、歩くたびにチャグチャグと鳴る鈴の音がその由来であると説明を受けた。

宮沢賢治が盛岡方言で書いた短歌にはこうある。

夜明げには
まだ間あるのに
下のはし
ちやんがちゃがうまこ見さ出はたひと。

ほんのぴゃこ
夜明げがゞった雲のいろ
ちゃんがちゃがうまこ 橋渡て來る。

いしょけめに
ちゃがちゃがうまこはせでげば
夜明げの為が
泣くだぁぃよな氣もす。

下のはし
ちゃがちゃがうまこ見さ出はた
みんなのながさ
おどともまざり。


(写真上)石割桜(盛岡市大通)
(写真中)岩手銀行中ノ橋支店前
(写真下)休息する馬コたち(中津川の川原)
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by hasiru123 | 2013-06-23 22:24 | その他

「生命」の輝きと躍動感

米国に住む日本画のコレクタ-であるジョー・プライス氏が保有する約100点の江戸絵画。これらの傑作を集めた展覧会「若冲が来てくれました/プライスコレクション 江戸絵画の美と生命」を見てきた。仙台、盛岡、福島と、東北3ヶ所を6ヶ月かけて巡回するもので、一番近い仙台を逃してしまったため、盛岡まで足を伸ばした。
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なぜこの時期に東北なのか。プライス氏はインタビューで「2011年3月に起きた震災による被害があまりにも衝撃的だったので、悲しみを和らげるものをお見せしたい」(多言語ウェブサイト・ニッポンドットコム)と語っている。若冲の個人コレクションは、7年前に東京国立博物館等で公開されたことがあるが、これだけ多彩な絵画を見られる機会は今後そうないだろう。

1センチ平方のマス目が8万6000個以上もある。その上に数多くの動植物と霊獣が描かれている。動物や鳥たちが一緒になって歌い、オーケストラを奏でているかのようである。気の遠くなるほど多数のモザイクでできた不思議な屏風だ。伊藤若冲の描いた「鳥獣花木図屏風」である。

六曲一双の屏風だが、一つ一つのマス目に目を凝らすと、ひとつの中でも細かく描かれている。それでいて全体が見事に調和がとれている。まるでコンピュータで計算されつくしたかのようだ。想像を絶するくらいの時間と試行錯誤が繰り返されたであろうことが推察される。

若冲の生きた江戸時代中期としては珍しい動物や、空想上の霊獣が面白い。若冲は仏教に通暁していたと言われる。草木や国土のように心を持たないものでさえ、みんな仏性があるから、成仏するという考えを身につけていたそうだ。この絵には、若冲のそんな考え方が色濃く反映され、「生命」の輝きと躍動感に満ちているように思えてくる。もっと時間をかけて、繰り返し観たい作品である。


(写真)岩手県立美術館
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by hasiru123 | 2013-06-16 16:09 | 芸術

日本陸上選手権が面白くなった

今年の日本陸上選手は、6月7日から3日間にわたって東京・味の素スタジアムで行われた。今年は、8月にモスクワで行われる世界選手権の代表選考会を兼ねる。

この大会の特徴をひとことで言うと「記録と趣向の面白さが増した」ことだろう。陸上競技は五輪の中でメイン競技と言われながら、国内の人気は今ひとつだった。観客数では、サッカーや野球に大きく水を開けられている。ところが、今回は少し違っていた。広い味の素スタジアムのメインスタンドがいっぱいのファンで埋まっていた。

先ごろ男子100mで10秒01を出した高校生の桐生祥秀人気や、男子200mと男女やり投げ、男子棒高跳びなどへの期待もあっただろう。また、代表選考の基準に「派遣設定記録」(世界ランキング12位程度)を設け、この記録をクリアした選手は、日本選手権で8位以内で入賞すると自動的に内定することになった。世界選手権で入賞が期待できる記録を持ちながら、日本選手権で故障などで上位に入れなかった選手の救済措置である。ねらいは、より高い記録を目指そうというインセンティブ効果にあった。先に挙げた種目の好成績にもつながったといえよう。

もうひとつの人気上昇の要因は、見せるための仕掛けが組み込まれていたことだ。例えば、プログラムの編集である。これまでは、タイムスケジュールやエントリーメンバー表が中心の地味な表記だったが、種目ごとの解説記事のスペースが大きくなった。また、場内アナウンスが豊富になり、レースが終了すると動物のマスコットを身につけた子供たちが選手を祝福するシーンも見られた。

この会場は、多目的スタジアムである。当初は主に球技会場として使用されていたが、現在は陸上競技場としても利用されるようになった。したがって、トラックと観客席が接近した設計になっている。できれば、トラックと観客席の距離をもっと縮めて、9レーンの選手を目の前で見られるくらいにしてほしいと思っている。選手と観客が近く感じられるという心理的な効果に加えて、長距離種目ではスタンドが接近しているとトラックが狭く感られじるという視覚的な効果が働くからだ。ヨーロッパの競技場は意識的にそういう設計を施しているところが多いと聞く。

選手のモチベーションを上げるには、成績や記録などの結果だけではなく、会場まで足を運んでくれる観客の応援という後押しも大切だ。一方で、観戦する側からすると、もっと応援したくなるような熱い戦いをしてほしいと思う。選手と観客の双方がうまく噛み合えば、Jリーグを凌ぐ日が来ることも夢ではない。
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by hasiru123 | 2013-06-11 07:19 | その他

トラック競技への挑戦

数年ぶりの5000m走だった。6月1日(土)に東松山陸上競技場で開かれた東松山市長距離記録会のことである。

坂戸陸協から出場した2名の応援のつもりで参加したものである。エントリーしていた一般・高校男子の1組のスタートは12時40分。大会本部発表によると、正午の気温は30度まで上がっていた。まだ暑さに慣れていないため、控えめなスタートになった。中盤でペースが落ちることなく、かといって終盤伸びるでもなく、結果としてはほぼイーブンペースで走り切ることができた。

イーブンで行けたのならうまく走れたのかというと、そうではない。実は、最近はイーブンペースで走るのが一番楽なのである。ペースの変化に弱くなった、というか臆病になったと言った方が的確かもしれない。だから、どうしてもペースの上げ下げを嫌うようになってきた。レースでも、練習でも。

この日は、「大台を越えないで走る」ことが目標だったので、まずまずの結果である。「大台」の中身については、ここでは書かないが、キリのいいタイムという程度の意味である。しかし、今秋に予定しているマラソンのことを考えると、大台云々に満足していてはいけない。5000mの走力が上がれば、マラソンのラップを刻む上で、その分余裕が生まれ、後半のねばりにつながって、記録に大きく影響してくる。これは、マラソンの教科書に書かれているセオリーでもある。したがって、5000mをしっかり走ることはシリアスなランナーだけでなく、一般市民ランナーにとっても走力の確認ができるという点で、意味のあるエクササイズなのである。
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そのためには、苦手なことにもチャレンジしなくてはいけない。私にとっての苦手といえば、下りを走ること、そして近頃は上りも必ずしも得意科目とはいえなくなってきた。スピードに変化をつけて走ることも億劫である。それでも、マラソンのゴールで微笑むためには、そういった多少のつらい練習を行うことも必要だ。5000mを走って確認できたことは、こういうことだった。
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市民ランナーには、トラックの競技にはあまりなじみがないと思うが、陸協登録をしておくと、都道府県陸協などが主催する競技会に接する機会が増えて、出場すれば公認記録を取得するという楽しみもある。春から秋にかけては、トラック競技が盛んに行われている。この日の5000mのレースのように、速い組からゆっくり走る人のための組まで用意されていることが多い。トラック競技は、決して専門の競技者のためだけの大会ではない。ぜひ、練習のつもりでチャレンジしてみてはいかがだろうか。


(写真上)3組のトップ集団
(写真下)最終4組の1周目
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by hasiru123 | 2013-06-02 21:20 | マラソン