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空き家について

私の住んでいる町では、世帯数の減少に伴い、空き家が散見されるようになった。最近、そのことについてあるコミュニティ紙に書かせていただいたので、短文を再録する。

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私の住んでいる町の自治会では、半年ほど前に各組長さんから空き家の情報を収集しました。町内全体の空き家の状況をつかむことで、自治会の役員や民生委員の見守りに生かしたいというのが目的でした。そんな折、放置された空き家の撤去や活用を進める「空家等対策の推進に関する特別措置法」が全面施行されました。

風雪の重みでつぶれる恐れがあったり、動物が住みついて衛生上問題があるなど、地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼす空き家を、幅広い視点から、特定空き家として、市町村が立木の伐採や家屋の修繕及び撤去などの措置に係る指導や勧告及び命令を出せる権限を新たに定めたものです。勧告後は固定資産税の優遇措置が解除され、命令違反には過料が科せられ、最終的には強制執行もできます。

防災や防犯、生活環境などさまざまな面で空き家の増加は問題があります。特定空き家として認定されるのは、空き家のごく一部になるとみられますが、放っておくと、老朽化が進んで、数年後には、危険な空き家になりかねません。そうなる前に、早目の対応を所有者に促すのも、この法律の狙いのようです。自治体は、厳しい措置だけでなく、空き家を活用する対策と気軽に相談できる窓口作りにも力を入れてほしいと思います。空き家の活用は、新たな街の魅力を引き出し、街を活性化することにつながるだけに、この法律の施行に期待しています。

空き家についての問い合わせは、川越市市民部防犯・交通安全課防犯推進担当(224-5721)まで。

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空き家というと不審火や防犯などの安上の全問題に目が行きがちだ。だが、空き家の問題は広く考えれば住宅問題であり、不動産の問題だと思う。労働力をどう確保するかとか、成熟した経済の中でどう折り合いをつけるかという問題にもつながる大きな課題だ。「空き家」の弊害に固執するあまり、全体を見落としては前へ進むことができない。今回の新法施行で八方塞がりだった空き家問題に光明が差したことは間違いない。
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by hasiru123 | 2015-09-25 19:39  

君原さんのマラソン哲学

近年の男子マラソンの高速化に際して--。世界と戦うには、後ろから追うのではなく、トップグループについて終盤で勝敗を決する、というサバイバルレースを想定した考え方がある。最後に勝てるかどうかはわからないとしても、初めからその流れに乗れないことには勝負にならないからだ。この戦術は、今や常識になっている。

君原健二さんは書いている。「私はその考え方に疑問を感じる。力もないのに追走するのは暴走にすぎない。世界のトップランナーについていくのは、それだけの高速を最後まで維持する力をつけてからではないと意味がない」(「私の履歴書」2012年8月1日~31日/日本経済新聞連載)。

2度目のマラソンとなった1963年2月の別府毎日マラソンのことだ。アベベ・ビキラ(エチオピア)の持つ世界最高記録を超えるハイペースで飛ばす寺沢徹選手(倉敷レーヨン)を追走して、37キロで振り切られ、ふらふらになってゴールした。2度目のマラソンを走って、その厳しさを思い知らされた経験からのアドバイスである。

君原さんは、同書にこうも書いている。「マラソンとはいかに速く自分の体を42.195キロ先にあるゴールまで運ぶかという競技である。体が蓄えているエネルギー源(糖質と脂肪)は決まっている。それをうまく使いながら、できるだけ早くゴールする。そのためにはイーブンペースで走るのが理想的だ」と。

ペースが速すぎて途中でエネルギーが足りなくなってはいけないし、安全運転でエネルギーを余らせてもいけない。人の動きに惑わされ、ペースを乱すと命取りになる。「マラソンとは人との戦いではなく、自分との戦い」だという君原さんのマラソン哲学に得心した。

ついでながら、君原さんは2010年の東京マラソンを3時間26分台で走り、11年ぶりに3時間を切っている。69歳になる直前のことである。このとき、すでに通算走行距離が16万キロを超えていて、地球を4周した計算になる。現役時代に、35回のフルマラソンを走った。マラソンの途中棄権が1度もないことを唯一の誇りにしている君原さんらしい記録だ。
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by hasiru123 | 2015-09-19 19:41 | マラソン  

私のトップスリー 北京世界陸上を見て

今年の世界陸上の見どころはたくさんあって、近年になくレベルの高い面白い大会だった。そして、会場の北京国家体育場(通称:鳥の巣)は連日多くの陸上ファンで埋め尽くしていた。アジアでも、陸上競技でこれだけのお客さんを呼べることを実証したのは喜ばしい。

競技の中身では、何と言ってもロンドン五輪や2年前のモスクワ世界陸上の再現かと思わせるようなボルトやファラーの強さが目立ったことだ。来年のリオ五輪でもこの二人を中心にレースが動くだろう。

私の印象に残った競技を3つ選んでみた。

まず、男子十種競技でアシュトン・イートン(米国)が世界記録で優勝したことを挙げたい。最後の1500mこそ2位だったが、それ以外の9種目はすべてトップだった。こんなにも強く、しかも種目間のバランスのとれた競技者を見たことがない。特に、1500mは圧巻だった。4分18秒25を切ると世界記録が成る。先頭の選手から引き離され、なかなかペースが上がらない。疲れがだいぶたまっていて、足が重そうだ。あと1周の鐘が鳴ると見違えるようにペースを加速させ、4分17秒52でゴールイン。10種目にしてこの記録も大したものだが、計ったかのようなスパートは長距離ランナーのデッドヒートを見ているようだった。

二つ目は、男子やり投げ。上位二人の90mの攻防は見ごたえのあるものだった。優勝したのはケニアのジュリアス・イエゴ。2投目までは入賞ラインぎりぎりの8位だったが、3投目に92m72を投げて勝負を決めた。ハイレベルの争いに思わず鳥肌が立った。日本の新井良平(スズキ浜松AC)も83mを超えたが9位に終わり、上位8人が進める4投目以降には進出できなかった。

常に82m以上を投げたら入賞が見えてくるという日本の常識が通用しなくなった。3位だったテロ・ピトカマキ(フィンランド)が87m64を投げていることから、この種目のレベルは確実に上がったといえるだろう。

もう一つは、残念だったという気持ちも込めて男子マラソンを挙げたい。以前にも書いたが、優勝したG・ゲブレスラシエ(エりとりア)は19歳の伏兵だった。また、2位と4位に入った選手は、北京の暑さにもかかわらずシーズンベストを更新している。ケニアの実力選手が上位に入ることができなかったのは意外だった。そういう意味では、日本人選手だけでなく、走力のある選手も力を出し切れなかった男子マラソンだったと言えるのではないか。ただし、力を出せなかったその中身はだいぶ違うと思うが。

今回初めてエりとりアから優勝者を出したが、外務省のホームページから同国に入ってみると、西にスーダン、南にエチオピア、南東部にジブチと国境を接し、北は紅海に面していることが分かる。宗教は、キリスト教、イスラム教他が同居しているらしい。そのことからも複雑な政治情勢だとがうかがわれる。人口が約560万人で、面積は北海道と九州とを併せた広さとほぼ同じだそうである。

そのエリトリアのゲブレスラシエが「金メダルを獲得した陰には、日本の支援があった」と毎日新聞が報じていた(8月28日朝刊)。ボランティアで20年以上、同国を支援する宮沢保夫さんと日本のスポーツメーカーの協力に加えて、今後は大学の医学部門の支援を得て、陸上の高地トレーニングの効果を検証するとのことだ。金銭面での支援だけでなく、選手強化というソフト面での支援は、これからのスポーツ交流には欠かせない。箱モノを作ることや日本人選手の強化よりもこちらの方が、五輪の価値を高めることにつながるのではないかと思う。
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by hasiru123 | 2015-09-07 18:16 | 話題