夢のマラソン

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無名の指屈して信びざる有り

孟子が次のように言った。「今、無名の指屈して信(の)びざる有り。疾痛して事を害するに非(あら)ざるなり。如(も)し能く之を信ばす者有らば、則ち秦楚の路を遠しとせず。指の人に若かざるが為なり。指の人に若かざるは、則ち之を悪(にく)むことを知る。心の人に若かざれは、則ち悪むことを知らず。此れを之類を知らずと謂うなり」。

これは孟子の「告子章句上」の一説である。孔子の教えを受けついで、さらに人道的な立場を貫いた孤高の哲学者である。

もしくすり指が曲がってのびないと、格別痛むとか不自由ということはなくとも、人々は遠方に出かけてでも何とかなおそうとする、と彼は言う。指が人なみでないことを恥じてそうするのだが、心の方は人なみでなくても一向平気でいる。物ごとの軽重を知らないというべきである--と。

まことに、おっしゃるとおりだと思う。しかし、「物ごとの軽重を知らない」私は、いつも悩む。走りながら、この言葉がのどに刺さった小骨のように引っかかるのだ。

膝が痛くなれば半月板を故障していないだろうかと医師の診断を仰ぎ、足の裏が少し変だと感じれば疲労骨折ではないかとレントゲンの検査を受ける。こちらの医院で診てもらった後に、もっと他にいい方法があるのではないかとあちらの病院へ行く。たいていはしばらく休養をとって様子を見れば自然に治癒することがほとんどである。

そこで、最近は故障に際して、過度に医療に寄りかからず、走りながら体が悲鳴を上げている声を静かに聞くように心がけている。30年前に読んだ『ゆっくり走れば速くなる』(ランナーズブックス)の著者で、当時日本電気ホームエレクトロニクスの監督だった佐々木功さんは「走ってケガがしたものは、走って治せ」と書いている。故障の連続で苦労したこの指導者のことばは、孟子の箴言のようにも聞こえる。
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by hasiru123 | 2015-11-23 21:25 |

新たな食品の機能性表示制度がスタート

スポーツ選手、とりわけランナーに関心の高い健康食品について書いてみたい。

毎日摂取している食品にはビタミンやミネラルを始めとする多くの健康に良いとされる成分が含まれている。本来は食事や運動、睡眠などで健康維持を図り、体調を崩したときは医療機関の診断を仰ぐというのが通常の生活スタイルだと思う。ところが、最近はビタミンなどの栄養素や動植物の抽出物を食品として補給するいわゆる健康食品が多く市場に出るようになった。

健康食品に対しては、医薬品との混同を避けるために機能性を表示することは法律で制限されている。それが可能なのは、これまでは特定保健用食品(トクホ)と栄養機能食品に限られていた。

今年4月に、この二つの食品とは異なる新たな食品の機能性表示制度がスタートした。「機能性表示食品」である。

これまでの制度と大きく異なるのは、「商品ごとに、その有効性や安全性の根拠となる試験や研究報告が販売前に消費者庁ホームページで公開されるので、中身を読んで確認できることだ」と毎日新聞の小島正美記者は書いている(7月14日「記者の目」)。これまで、トクホはその情報のほとんどを公開してこなかったからだ。ますは、その点を評価したい。

一方で、心配な点もある。

機能性表示食品の安全性や機能性はどのように保証されるのだろうか。消費者庁によると、安全性は「今まで広く食べられていたかどうかの食試験」「安全性に関する既存情報の調査」「動物や人を用いての安全性試験の実施」のいずれかによって評価されるという。また、機能性は「最終製品を用いた臨床試験」と「最終製品または機能性関与成分に関する文献調査(研究レビュー)」のいずれかによって評価するとある。

これらの情報は事業者から届け出られ、ホームページで公開される。一方で、届出制であることから安全性に問題があるものや科学的な根拠があいまいなものが多く出回ることはないだろうか。また、それらのチェックはどこが担うのか。

消費者が機能性表示食品を適切に選ぶために事業者が公表した情報をチェックすることになるが、そのための時間が十分に確保されているだろうか。消費者庁は「商品の販売日の60日前までに届け出る」と説明しているが、同サイト内の「届出詳細内容」を見ると、販売予定日はあるが届出日の記載がないため、販売日までに消費者に情報開示される期間がどのくらいあるのか不明だ。

また、届出情報には多くの安全性や品質、機能性等ついての情報が詰められているが、それらを読みとるには一定の専門知識がないと難しい。消費者に分かりやすく改善する必要があるし、消費者も読みとる力を身につけないといけない。

実際に機能性表示食品を手にとってみると、ラベルなどに記載された表示内容が細かく、字も小さくて読みにくい。一方で、消費者は食品の有効性だけでなく1日当たりの摂取目安量や摂取の方法、摂取上の注意点などをしっかり確認する必要がある。誤った使い方をすれば、効果を発揮しないだけでなく健康を害するリスクがあるからだ。

多くの課題を背負った中での新しい表示制度の出発である。怪しい健康食品が淘汰されればと期待しつつ、見守りたい。
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by hasiru123 | 2015-11-19 21:00 | 基礎知識

休養

知人から、「最近のブログを見ているとあなたの走りが想像できますね」と声をかけられた。その人は何を言いたかったか、すぐに分かった。今年になって大会へは出られず、日々の練習量もぐっと落ちているので、気にかけてくださったのだと思う。

実は、最近ランニングとビールから遠ざかっていたのだが、昨日から再開することになった。というのは、2週間前に大腸検査でポリープを切除したため、その結果が出るまでは休止するよう医師から言い渡されていたためである。異常なしという診断を聞いて、元の生活スタイルに戻したところである。

練習は、昨年末から足の故障で約5か月間休養していたが、ビールの方を2週間も休んだのは、40年前に足の骨折で入院した時以来のことだった。ということは、裏を返せば40年間ビールを飲み続けてきたことになる。

数年前から週に1度は休肝日を設けて、しっかりローテーションを守ってはいるものの、40年もの間飲み続けることができたことには、感謝しなければならない。そして、休肝日をおくと翌週からのビールがよりおいしく感じられることも知った。これからも、頑なにローテーションを守っていくことにしたい。

今朝は小雨模様の天候だったため、チームの練習会へは行かずに自宅周辺で個人練習を行った。この季節としてはやや暖かかったことから、雨は気にならず、むしろ湿った空気感の中で気持ちよく走ることができた。時間の経過とともに、土が柔らかくなっていくのが走りを楽にさせてくれた。久しぶりのランニングは、格別の思いがある。

自分の走りについて書くことが少なくなったことは事実だが、選手の走りについてはむしろ冷静に見られるようになったのも確かである。来月からは、黒山・鎌北湖駅伝を皮切りにWGMや坂戸市陸協は3つの大会に臨むことになる。今年度は、選手としてでなく監督など見守る役回りのみになるが、選手たちが最良のパフォーマンスを発揮できるよう努めたい。

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(写真)南大塚の餅つき踊り(川越市立博物館前で/11月3日)
川越市の南西部にある南大塚地区に伝わる民俗芸能で、昭和52年(1977)に埼玉県指定無形民俗文化財に指定された。戦後は、1月15日の成人の日に行われていたが、現在は1月第2日曜日に実施されている。
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by hasiru123 | 2015-11-08 19:38 | 練習

パソコンを使えない若者たち

9月から10月にかけて実施された国勢調査で、オンライン調査の回収率が36.9%だった。20%を超える予想外の高さだった。このうち、スマートフォン(スマホ)から回答のあった割合は、12.8%となっていて、インターネットで回答した世帯の3世帯に1世帯は、スマホからの回答だったことになる(平成27年国勢調査におけるオンライン調査の実施状況/総務省)。

私もオンライン調査で回答してみたが、思っていた以上に記入しやすく、早く終えることができた。調査員に手渡したり、郵便ポストまで出しに行かなくて済んだ分、負担感も少なかった。

最近は、同調査を実施するごとに回収率が低下する傾向を見せていたが、今回は上昇に転じることができただろうか。かつて調査に携わっていた者として、少し気になるところである。

しかし、インターネットの普及率を考えると、オンライン調査が3分の1を超える回収率というのは不思議ではない。少し古いデータだが、総務省が行った平成26年度通信利用動向白書によると、25年末での人口普及率は82.9%で、スマホは42.4%だった。スマホの回収率はもっと高くてもよかったくらいだ。これからは、国の統計もデジタル機器やネットの後押しがないと回収率を上げられなくなるだろう。

最近、若い世代でパソコンを使えない人が増え、IT企業ですら新入社員が使えず困っているケースがある、と新聞にあった(毎日新聞10月16日)。スマホの普及や、親・学校のパソコンへの理解不足、経済的に苦しい家庭が増えていることなどが原因らしい。

「スマホだけではなく、パソコンも使えないと、グローバル競争が広がる中、社会人として生き抜くのが難しくなる」という研究者の声も載せていた。だが、本当に若者がデジタル機器を使えなくなったのだろうか。

この1年間に切り抜いた記事のスクラップを見ていたら(インターネットの時代に古いね!)、上記の懸念は払しょくされた。デジタル地図を使って原爆の被害を後世に伝えるインターネットサイト「ヒロシマ・アーカイブ」を平和学習に活かそうと、高校生と大学が協力して進めている取り組みがある。また、地図と新聞記事をタブレット端末に取り込み(無線LANの設備がないので)、現場での地理教育に取り組もうと高校教諭がGISを駆使して、修学旅行で活用する挑戦があった。

神奈川県の「高校生が教える情報モラル教育」は、情報モラルやインターネットの活用方法を学んだ高校生が講師になって中学生に教えるという取り組みだ。大阪府では、「高校生が教える!オトナのためのコミュニケーションアプリ白熱教室」で、スマートフォンの無料通話アプリなどの使い方を高校生が保護者や大人たちに教える取り組みを行っている。また、私の住んでいる埼玉県の高校でもそれに近い取り組みがある。

教えるために高校生は自発的により深く学習するとともに、中学生や大人たちと対話することで自らの意識を高める効果が期待できるとのことだ。これらは、高校生たちが学校の現場でインターネットを活用して、他の世代の人たちの生活に役立てようという取り組みの一部にすぎない。

パソコンやネットワークの進化は速い。数年後には、スマホよりさらに利便性の高いデジタル機器が登場してくるかもしれない。最低限、就職に困らない程度にパソコンに習熟することは必要だが、学生時代に上記のような現場(社会)に適用させる経験を積むことの方が、若い世代の情報リテラシーを向上させる近道のような気がする。
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by hasiru123 | 2015-11-05 07:06 | その他