リオ五輪が終わった。長距離種目については、男女とも世界の水準からさらに遠ざかってしまった、と思わせる内容だった。順位はともあれ、トップランナーが見える位置で戦うことができなかったからだ。

日本の指導者たちは一様に言う。トラック種目でスピードを強化せよ。その先に見据えるのがマラソンだ、と。はたして、そうだろうか。

マラソンのスピード化は、日本がマラソンの黄金期を迎えていた1980年代から言われていたことだ。さらにさかのぼると、1960年代に国際競技会に出場し始めたケニア選手たちが3000M障害で多くの好記録を作ったときにも、いずれこれらの次世代の選手たちがマラソンを走り、世界を牽引するに違いないと予感していたはずだ。

なぜ、スピード化に対応することができなかったか。それを顧みることから始めなければ、いけないだろう。

長距離走のスピードの基本は、当然のことだが800Mや1500Mの中距離種目だ。ところが、これらの種目は5000Mや10000Mに比べて、長きにわたって記録が低迷している。例えば、男子1500Mの日本記録は12年間更新されていない。高校男子に至っては、17年間も更新されていない。この分析と原因究明から始める必要があるだろう。

よく言われるのが、「日本の高校や大学の駅伝人気が、トラック競技の成長を妨げている」という論法である。たしかに、駅伝を目指して進学してくるアスリートは多い。それはそれで長距離の競技人口を増やす効果に貢献していることは間違いない。しかし、シーズンが冬場に限定される駅伝だ。この1点をもってスピード不足の責任を負わせるのは、少し違うような気がする。

箱根駅伝を目指して全国の高校から関東の大学に集まってくるように、中距離種目を目指して高校や大学に入ってくる仕掛けと動機づけが必要でなないか。

中距離走は長距離走に比べて、体内に乳酸が多く発生する。その意味では長距離走よりも競技時間が短いにもかかわらず、過酷な競技といえる。乳酸が溜まって動かない身体を酷使する練習に耐えることはつらいことだ。この試練を乗り越えるには、これまでと違ったコトやトレーニング方法で選手をやる気にさせる「何か」が求められよう。

問題は、その「何か」である。

箱根駅伝がこれほどまでに高校生選手たちを引きつけるのは、故郷を離れた選手たちを家族や親せき、地元の恩師や友人たちがこぞってテレビで応援し、見守ってもらえるからだ。人という生命体を動かす行動原理は3つあって、そのうちの「自尊心」は人を人たらしめるとても重要な動機である。明治大学教授の鹿島茂さんは、その著書『進みながら強くなる』の中で書いている。「人は、「ドーダ! おれ(わたし)って凄いだろ、どうだ! まいったか!」という自尊心の充足に向かうのですが、逆にみれば、これがすべての出発点である」「もし、人間に「ドーダ」がなかったら、科学者の偉大な発見も、芸術家の歴史的傑作も、起業家の社会を動かす大事業もすべてなかったかもしれない」。

箱根駅伝で、中継後に倒れ込むまで追い込むあの頑張りは、この「ドーダ」という自尊心の充足に他ならない。中距離種目に取り組む選手たちにも「ドーダ」を発揮する強い願望が生まれれば、多くの乳酸を発生させるきつい競技にもかかわらず進んでチャレンジする機運が生まれるのではないか。「ドーダ」と科学的なトレーニングが融合すれば、世界のトップランナーの背中が見えてくるに違いない。五輪を見ながら、そんなことを考えた。

(注)「ドーダ」は、東海林さだおさんの漫画に出てくるフレーズである。







































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by hasiru123 | 2016-08-27 11:30 | マラソン

リオ五輪は8月5日(土)朝のサッカーから始まった。この日から、五輪を始めとするスポーツ情報のシャワーの量に圧倒され、なかなかついていくことができなかった。この時期は、夏の甲子園が始まろうとしていたし、プロ野球はセパともペナントレースが白熱を帯びてきた。そして10日、イチローがメジャー通算で3000安打を達成した。

自分の走る方の練習も少しずつ量を増やそうとしていたし、お盆の準備もしなくてはいけない、という私ごとも頭にあった。そこに、五輪である。出場する選手には失礼かもしれないが、開会式前後は、テレビの五輪ダイジェストをながら視聴するのと、新聞を拾い読みするので手一杯という気持ちがあった。

さて、後半から始まった陸上競技。なかなか新聞の一面を飾る記事が見られなかった。トラックもフィールドも、日本人選手にとっては厳しい大会だなア、と思いつつダビングしたビデオを見る日が続いた。ところが、である--。

目の覚めるような快事があった。男子400Mリレー(4継)の決勝である。37秒60のアジア新記録で、この種目初の2位に入ったのだ。2日前の予選でも、37秒68のアジア新記録で2位で通過していたので、北京五輪の再来かと期待していた。そして、第4コーナーを通過した時点で、1位のジャマイカと並ぶような展開。私は、夢を見ているような心地ですらあった。北京の3位を超える活躍は驚きである。

男子の短距離陣は、100Mと200Mを見る限りでは徐々に世界との距離を縮めつつあることは実感していた。シーズン当初からいい流れがあり、日本選手権でそれが開花した感があった。リオ五輪では、100Mで初めて2名の準決勝進出者を出し、200Mでは3名とも予選敗退となったものの、持ちタイムでは全員が準決勝へ進出してもおかしくないところまで力をつけてきたと思っている。一方で、彼らには9秒台とか決勝進出とか、何かとプレッシャーがかかり、べストの状態で臨むのに苦労したのではないだろうか。

特に、周りの期待の高かった100Mの桐生選手や200Mの飯塚選手は、予選敗退からリレーまでにもう一度気持ちと体調を引き上げるのは並大抵のことではなかったはずだ。そこを上手にクリアし、バトンを確実にしかも効果的つない彼らの調整能力の高さに敬服する。

考えるに、日本人選手が身体的能力の壁を破るには、心理面の克服と技術力の向上、そして基本の徹底という3点に行き着く。男子4継の活躍が、陸上競技に取り組んでいる若い選手たちの支えになればうれしい。


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by hasiru123 | 2016-08-21 20:33

山岳遭難事故に学ぶ

山岳遭難の多い長野県で2014、15年の遭難件数を見ると、北アルプスでは7、8、9月の遭難が多いことがわかります。そして遭難の状況を調べてみますと、猛暑だった15年8月は「疲労」が原因の遭難がとても多いのです。
(中略)
前述の長野県のデータを見ると、14年の「疲労」遭難は5月に多く、原因は低体温症、つまり「寒さの疲労」でした。15年は8月の晴れの日に「疲労」遭難が多く起きています。具体的な状況で見ると、夏の遭難は心臓発作、熱中症、高山病が原因の多くを占めています。
(中略)
これらの夏の「疲労」遭難の事例を見ると、「夏の晴れた日」という気象条件が影響していると気がつきます。それを踏まえると、夏は「脱水」の疲労が遭難に大きな影響を与えていることが、容易に想像できると思います。
(中略)
14年から15年にかけて、登山中の心臓死が増えました。昨年夏にこの連載「防ごう!山での心臓突然死」のシリーズでも紹介しましたが、脱水は心臓突然死のリスクも高めます。

以上は、心臓血管センター北海道大野病院医師で国際山岳医の大城和恵さんが「デジタル毎日」の「登山外来の現場から」と題して連載している記事からの引用である。猛暑の登山は疲労が招く遭難に注意を、と呼びかけている。

夏の「疲労」による遭難事例は、夏のランニング事故にもそのままあてはまることだ。気温が上昇した時間帯に走っているランナーを街で見かけることがある。ここ数日間は、朝とはいえ9時を過ぎると30度をゆうに超えていた。健康な大人でも上記の山岳遭難のような事故が、夏のランニングで起きてもおかしくない。

一昨年の同時期の小ブログに書いたことではあるが、脱水回復までに時間的な遅れが生じることから、「無自覚脱水」に陥りやすいことが知られている。運動中に過不足なく水分を補給し続けることは不可能だとしても、水をとらない限り脱水へ向かって進行していくことを念頭において、「早めの給水」が欠かせない。練習の前後はもちろんのこと、走っている途中でもこまめな給水に努めるべきである。

なお、暑さ対策としての水分には市販のスポーツドリンクを利用するとよい。また、自分の好みに合った「経口補水液」(注)を作って補給することもできる。夏の脱水対策は、小まめな給水にしかず、だ。


(注)私はこの時期になると、マイ「経口補水液」を毎晩のように作って、冷蔵庫に入れ、翌朝の練習の前後に飲んでいる。以下、私の作成例。水500mlに砂糖20g(ボトルキャップ3杯または1個3.3gの角砂糖6個)と塩1.5g(透明スプーン1杯)を加えてよくかき混ぜる。レモン汁を入れると飲みやすくなる。


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by hasiru123 | 2016-08-10 21:25 | 基礎知識

礼文島を訪ねる

利尻島から北へ船で約1時間行くと、そこは礼文島だ。

日本海に位置する最北の離島である。その東海岸は穏やかな丘陵地が広がり、海へと続く。一方、冬の厳しい季節風を受けやすい西海岸は切り立った岩場が続いている。その山容は、大地溝帯の影響を受けた北アルプスの東斜面の鋭利さとその西側のおだやかな斜面に似ている。

ここも、夏には約300種の高山植物が咲き乱れ、本州の2000メートル以上の山でなければ見られない姿がある。

静かな町である。地元の人に聞くと、島には信号が1台しかないそうだ。そういえば、私が朝走った海岸沿いの道路には信号機を目にすることがなかった。もしかしたら、信号機の青を見落としただけかもしれないが。

早朝のせいか、街を歩いている人も見かけない。聞こえるのは、打ち寄せる波の音とウミドリの鳴き声だけだ。この日も、昨日と同じ80分をかけてゆっくりジョグをした。


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          アザミ
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          エゾニュウ
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          チシマワレモコウ
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          レブンシオガマ
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          ハマナス
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          ハマヒルガオ
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          スカイ岬
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          礼文島からの利尻富士
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          桃台猫台
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by hasiru123 | 2016-08-03 20:42 | その他

利尻島を訪ねる

朝6時。

鴛泊港の宿舎を飛び出すと、港町を山側に向かって走り出した。湿った風が吹きつける。関東地方の木枯らしを思い起こさせる、冷たい風だ。10分ほど市街地を走ると、中学校の近くに運動公園があるのを見つけた。幸い、400メートルのトラックがあった。ここで、ゆっくりジョグをすることにした。

日本海に浮かぶ島、稚内から約20キロ離れたところにある丸形の島は利尻島だ。この島の象徴といえるのが利尻山である。きれいな円錐形の形をしたその山は「利尻富士」と呼ばれ、日本百名山にもなっている。この山は固有の多種多様な高山植物が見られることから、初夏から夏にかけて多くの登山者やハイカーでにぎわう。

今回の旅行では、ランニングはほどほどにして、ひたすら島の自然にレンズを向けることにした。


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          ウミネコ
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          エゾニュウ
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          オオバユリ
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          オニシモジ
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          タチギボウシ
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          ハマナス
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          ヤマグア
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          ヨツバヒヨドリ
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          姫沼
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          富士見野園地
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by hasiru123 | 2016-08-03 20:29 | その他