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明暗を分けた連投

「9回は、これまでの歴史が思い出されて、試合のことはほとんど目に入らなかった」。優勝した興南(沖縄)の我喜屋監督の言葉である。

興南は全国高校野球選手権大会決勝で、東海大相模(神奈川)を13―1で圧倒、初優勝を飾った。春の選抜を制したのに続いて、史上6校目となる春夏連覇の偉業も同時に達成した。興南ナインの健闘に心からお祝いを述べたい。

準々決勝と準決勝を逆転で勝ち抜いた興南は、決勝では6試合の中で、最も素晴らしい出来だった。ピンチの後のチャンスをものにする試合運びは、日頃の鍛え抜かれた練習とそこから生まれた自信の表れだ。また、興南のエース島袋は、要所を変化球で仕留めて、直球狙いの打者に付け入るすきを見せなかった。春の選抜は力の投手とすれば、夏の大会では技に磨きがかかったといえようか。

点差は開いたが、息詰まる決勝戦だった。1点をもぎ取るための一投一打に、最後まであきらめない、選手たちの粘りが伝わってきたからだ。

例えば、6回表の東海大相模の攻撃。1死から3番の田中が1ストライクからの2球目、フォークを打ってセカンドゴロとなったが、一塁へ頭から滑りこんで内野安打となった。続く4番の大城卓が初球、キャッチャーが後逸する間に田中は二塁へ。2ボールからの3球目、スライダーを打って大きな当たりのレフトフライ。普通なら、二死一塁となるところを二走・田中は三塁へタッチアップした。得点が拮抗していたなら、興南には悔いが残る場面となっていたかもしれない。

2死三塁となって、5番一二三。2ストライク1ボールから1球ファウルした後の5球目、低めのフォークに空振り三振。三塁まで走者を進めたが、初の得点とはならなかった。こういったあたりは、東海大相模はついていなかった。しかし、大差がついた展開の中でも、相手のすきを見逃さないち密なプレーは、感動的だ。しっかり練習を積んだ高校球児にとっては当たり前のことかもしれないが。

ところで、気になることが一つ。大会屈指の好投手と言われた一二三が大きく崩れたのはなぜか、ということだ。私は、その要因の一つに先発完投型のエースが連投することにあるのではないかと思っている。

興南は3回戦と準々決勝はくじ運が悪く連戦となったが、準々決勝と準決勝との間に1日休養日があった。準決勝と決勝は連戦である。それに対して、東海大相模は準々決勝から決勝まで3連戦となった。

両校ともエース1人が甲子園の試合の大部分を投げている。 最近は、選手の健康を考慮して、準々決勝の4試合を2日に分けて行うようになった。それでも組み合わせ次第では、東海大相模のように3試合連続ということもある。この連投の疲れが投手の調子に少なからず影響を与えた可能性は否定できない。

連戦となる場合の投手の投球数やインニング数に制限を設けたり、エース級の投手を二人以上置くことを真剣に考える必要がある。また、準決勝と決勝に中1日置くことも効果がある。かつて、決勝にコマを進めたあるチームの監督がこんなことを言っていた。「決勝前夜は、選手は疲れきっていて、しかも翌日のことを考えて興奮している。 いかに、選手を眠らせるかに苦心した」。少しでも多く寝た方が有利なのは間違いない。
by hasiru123 | 2010-08-22 23:16 | その他