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枯葉剤とベトナム

猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤を1972から73年にかけて、沖縄の米軍基地で浴び、健康被害が出たと訴えた元米兵がいた。その元米兵が米退役軍人省が補償を認めていた、という報道が8月にあった(朝日新聞ほか)。ベトナム戦争で使った後に沖縄に持ち込まれた装備に枯れ葉剤が残っていたそうだ。

枯葉剤は第一級の発ガン物質であり、遺伝毒性があるとされるダイオキシンは、ベトナムの第一世代だけでなく、第二世代、第三世代へと影響を及ぼす。結合双生児として生まれたベトちゃんとドクちゃんの事例は記憶に新しい方も多いのではないか。

フォトジャーナリストの中村梧郎さんの写真展「枯葉剤とベトナム」のギャラリートークを、昨日川越市立博物館で聞いた(写真展は川越市立美術館で、11月18日まで)。中村さんは、70年代初めからベトナム戦争を取材し、74年以降枯葉剤問題を検証し続けている。中村さんの話では「61年から71年まで10年間にわたって行われた枯葉作戦は反米解放勢力の拠点である熱帯雨林を砂漠化し、隠れることができないようにするのが狙いだった。枯葉成分は1週間でなくなるが、毒性の強いダイオキシンは植物を枯らすことはない。しかし、人体への影響はいつまでも残る」という。

中村さんが76年にカマウ岬で撮った「枯葉作戦で枯死したマングローブの森」というモノクロームの写真。枯れ果てたマングローブの森を一人の少年が裸足で歩いている。外国のメディアが立ち入ることはない地域だ。この少年は下肢麻痺のまま成長した。18歳のときの母子での写真が1枚あった。母親が息子を支えながらやっと立っている。

ベトちゃんとドクちゃんの身体はひとつになっていたが、幸いにして内臓はつながっていなかった。88年に分離手術を行い、成功。手術室の模様を撮影した写真もある。ベトちゃんは07年に急逝したが、ドクちゃんは双子の父親となっている。
枯葉剤とベトナム_c0051032_23345536.jpg

ベトナムにおけるダイオキシンの影響は地図上にプロットされた砂漠の森の色分けでおよその広がりを知ることができる。しかし、もっと恐いのはベトナムよりも大規模に行われたカンボジアでの解放勢力を駆逐するために行われた枯葉剤の散布だ。カンボジアもアメリカも発表していないのでわからないからだ。そして、沖縄だ。「国防総省は沖縄での保管や使用の記録がないと言っているので問題ない」という日本政府の姿勢を中村さんは批判している。

今後、このような事態が私たちの周りに起きないようにと切に願う。


(写真)写真を解説する中村さん
by hasiru123 | 2012-11-11 22:47 | その他