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ポスト東京五輪

東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京五輪、五輪と表記)の開催については、招致決定にいたる過程に問題があり、さらにその後の行方についても大きな懸念が残っている。また、陸上競技にかかわる者の一人として、国立競技場の建て替え問題についても心配な点が多くある。

問題ずくめの東京五輪だが、大づかみに言えば以下の3点に懸念の内容を整理することができよう。

1 地方で急速に人口減少が進行する一方で、東京へのヒト、モノ、カネの一極集中が止まらない。東京五輪は、一極集中を加速させる役割を担うのではないか

2 50年前の東京五輪後に深刻な経済不況に見舞われた。当時は高度成長の途上であったため、結果として不況を吸収し、さらに成長に転換するエネルギーがあった。しかし、人口減少が進行する五年後は、不況を最小限に抑える手立てはあるのか

3 首都圏で進行する様々な開発に、五輪後を見据えた持続可能性を実現する仕組みがあるか

開催が決まった現在、これらの課題については市民として前向きに、広く議論し向き合っていく必要があると思う。

私の住む埼玉県では、射撃とサッカー、ゴルフが開催される予定になっているため、この問題に無関心ではいられない。ゴルフが行われる川越市では、早くもオリンピック大会準備室が開設された。開発の行方を見守るだけでなく、私たちの周りに作られるハードやソフトについてよく観察し、納得のいかない点があれば声を上げていくことが重要だと考える。ここでは、「3」について考えてみたい。

東京五輪の開発に際して参考になるのは、先に開催されたロンドン五輪だろう。建設から運営、閉会後のすべてに「持続可能性」を優先しているからだ。

2012年に持続可能なイベントのためのマネジメントシステム(国際規格ISO20121)が発行された。この規格のベースとなったのは、BS8901という英国生まれのの環境・社会・経済のバランスの取れた大会を運営するために開発された品質規格である。モノを作ることよりも、レガシー(イベントの後に残される結果)を意識した発想だ。

気候変動や廃棄物、生物多様性などのサステナビリティのための5つの基本テーマを挙げ、このテーマが環境だけでなく、雇用の創出のような経済的側面やライフスタイルの奨励といった社会的側面にもフォーカスしていることが特徴だ。

東京五輪招致委員会が招致活動にあたってIOC(国際オリンピック委員会)に提出した立候補ファイルには、この規格の適用が明記されている。JOC(日本オリンピック委員会)を始め、関連する企業や団体がISO20121を遵守する取り組みが求められ、実行できないときはこの事業から退場するしかない。

五輪に関与する組織がこの規格を利用して持続可能性を向上しようとする場合、規格に従って持続可能なマネジメントシステムを構築し、文書化し、維持しなければならない。証拠に基づいたアプローチが求められるのはこの仕組みの強みである。

私が勤めていた会社では、1SO9001という品質システムを導入していたが、使っていて思わぬ勘違いに陥りやすいことに気がついた。システムを取り入れて製品の質を上げ、顧客満足を高めることが本来の目的であったものが、いつのまにかシステムを維持すること自体が目的となってしまう落とし穴である。五輪が規格維持に名を借りて、目的を見失ってはならない。

ISO20121の積極的活用は、一部の大手企業やシンクタンクにとどまらず、中小企業や市民団体が競争優位を獲得する絶好の機会と考える。持続可能な東京五輪をマネジメントすることは、相当の難問である。五輪終了後の残存物が後の世代の足かせにならないよう、手を尽くしたいものだ。
by hasiru123 | 2015-02-23 19:54 | その他