かつて、長い距離をゆっくり走るとき、その単調さに我慢できなくなることがよくあった。そんな時よく試みたのが走りながら歌うことだった。例えば、ドリームズ・カム・トゥルーが歌う「晴れたらいいね」だ。東京下町の両国を舞台にした朝ドラ『ひらり』のテーマソングである。
♪山へ行こう 次の日曜 昔みたいに
雨が降れば 川底に沈む橋越えて
胸まである 草分けて ぐんぐん進む背中を
追いかけていた 見失わないように
四分の四拍子のリズムが走るテンポに合っていて、何度歌っても飽きない。そして、小節から少しはみ出し気味になるのも気分転換になって、気に入っていた。あまりやさしくないところがいいのかもしれない。
しかし、最近は走りながら歌おうとしなくても単調さが気にならなくなってきた。きっと、走る距離が減ったことが影響しているのかもしれない。
話は変わるが、ジョギングするときにいつもiPodで音楽を聴いているランナーがいることをラジオで知った。一台に1000~2000曲入っていて、それを7台ぐらい持っているのだそうだ。3か月前にFM放送で聴いた村上春樹の「村上RADIO」という音楽番組である。
走るときに適した音楽は何かというと「むずかしい音楽はだめ」。リズムが途中で変わるとすごく走りにくいから一貫したリズムで、できればシンプルなリズムのほうがいい。メロディがすらっと口ずさめて、できることなら勇気を分け与えてくれるような音楽が理想的とのことだった。
番組で流していた曲に、こういうのがあった。ブライアン・ウィルソンがつくったディズニー関連の曲を集めたアルバムの中の一曲で、3つの曲が一緒になっている。一曲目が「YO-HO」。これはディズニーランドのカリブの海賊のテーマソング。あと2つは「Heigh-Ho」と「Whistle While You Work」(口笛吹いて働こう)。
とてもいいリズムで、聴いていると思わずシューズを履いて戸外に駆け出したくなるそんな曲だ。iPodはちょっと重たいので、スマホに入れて聴いてみたくなった。