2020年 05月 09日
ボール・パーク 『ウイニング・ボールを君に』
近頃のプロ野球では、太陽を浴びながらゲームを見る機会が少なくなった。野球は基本的に空の下で行われるものであり、平日は観客の利便性を考えてやむを得ずナイト・ゲームで実施する、というのが少年時代からの常識だった。
いまは、プロ野球の12チーム中6チームがドーム球場(いずれも密閉式)である。日本でドームが多いのには、雨が多いことや夏の猛暑などの気象上の理由があるようだ。とはいえ、青空の中で白球を追うシーンが少なくなったことは、少し寂しい。
野球の兄貴分であるメジャーリーグではどうなのか。ネットで調べたら、30チーム中6チームがドームで、そのうち5チームが開閉式(屋根が開閉する)だった。ドームだと人工芝を使うことになって、選手がケガをしやすくなることや建設コストがかさむことなどがその理由らしい。
最近、山際淳司の『ウイニング・ボールを君に』(角川文庫)を読んでいたら、日米の野球観の違いもドーム球場の多少に関係があるような気がした。
<日本では野球場のことを「スタジアム」ということがあるが、アメリカに行くと、ちょっと違う。野球場は「ボール・パーク」である。(中略)アメリカ野球に特有の明るさが「ボール・パーク」という言葉ひとつににもあらわれているような気がする>(「胸の中を吹く風」)。
「スタジアム=競技場」と「パーク=公園」の違いは大きいかもしれない。野外で見る野球には特別の気分があるような気がする。<緑の芝生と乾いた土、その上にひかれた白い線。それらがかもしだす匂いが好きだ>と山際は書いている。
毎年5月から6月にかけては、いくつかの球団が本拠地を離れて地方球場でデーゲームを行う光景が見られる。例えば、昨年は楽天が仙台を除く東北で3試合。巨人は関東で3試合、北信越で3試合といった具合である。天気が良ければ、スタンドはきっと白一色に染まるはずだ。