箱根駅伝 襷をつなぐドラマ (oneテーマ21)

酒井 政人 / KADOKAWA/角川書店


箱根駅伝の予選会が10月18日に行われ、10校のシード校に加えて、来春の本大会に出場できる上位10チームが決まった。これまで予選会は、午前中に行われて午後に録画放送されていたものが、昨年から地上波で完全生中継されるようになった。駅伝とも、ロードレースとも異なるレース展開を見る楽しみが一つ増えた。

予選会は駅伝のように各区間をタスキでつなぐ方法をとらずに、20キロを各校12名以内の選手が一斉にスタートして、上位10位までに入った選手の合計タイムで争われる。記録を見ると、今年は全部で48校642名の選手がエントリーしていた。一見するとロードレースのようだが、走り方の様相はかなり異なる。それは、多くの大学が集団走を活用しているからだ。

予選会は上位10位までに入った選手の合計タイムで競うのだから、なにも自分の大学の選手と並んで走らずに各選手のペースでベストパフォーマンスを発揮すれば、それが結果としてチーム全体の成績に反映されるのではないかと思う。

なぜ集団走なのか。「その最大のメリットは「確実性」だ。ひとりがペースメイクするだけでいいので、付いていく選手は心身ともに楽になる」と『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』(角川oneテーマ21)の中で酒井政人さんは書いている。

さらに「予選会では特にチーム8~10番目の選手が何位で入れるかがポイントで、ここで大きく取りこぼすと、夢舞台が遠のくことになる」「主力がもたらす数十秒の貯金(野可能性)には目をつぶり、集団走で他の選手が設定タイムから大きく遅れないようにチームをコントロールするのが、予選会のオーソドックスな戦い方になりつつある」とも解説している。力のある選手が最大の力を発揮することよりも、走力の落ちる選手を少しでも引き上げることが予選会通過のカギとなることを知った。

12名のうち2名が失速しても後の10名がしっかり走ればいいから本大会よりも楽か思いきや、そんな簡単なものではないようだ。過去に予選通過は確実と思われたチームが惨敗したケースを取り上げ、「予選会は魔物」であるとよく言われることにも納得がいく。箱根を経験し、スポーツライターとして箱根を15年間追いかけてきた経験を踏まえて、個々の学生ランナーのリアルな姿を伝えている(著者は東京農業大学で箱根駅伝を走っている)。

著者によると、箱根駅伝はビジネスとして巨大化し、さまざまな欲望と利権が渦巻き、純粋な「学生スポーツ」とはいえないという。これから新春の箱根に挑戦しようとしている多くの学生選手の取材を通して、駅伝からマラソンまでを視野に入れた日本の長距離界の将来を考えさせてくれる一冊である。
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by hasiru123 | 2014-12-10 21:28 |