1 2005年 09月 17日
![]() 「雨がざあざあ降っています」 「一緒に生きていこうね」 「チョウォンの脚は?」 「100万ドルの脚」 「僕は出来る!」 「私の息子はサイコー」 母と息子の会話が交わされるシーン。母親の言葉をオウム返しのように返事をし、そして覚えることの繰り返しで対応している。 先天性で、特異な行動がなかなか理解されない「自閉症」という障害に、ストレートの速球勝負で挑んだのが『マラソン』だ。実話をもとにした韓国映画で、自閉症を抱えた20歳の青年・チョウォンと母親のキョンスクとの深い絆を中心に、障害の問題に直面した一家が葛藤を乗り越えていく姿を描いている。 「私の夢は、チョウォンが自分より一日だけ早く死ぬこと。そのためには100歳まで生きないとね」とは、息子から目が離せない母親のせりふ。チョウォンが生きている間は、自分以外にだれが世話をするのかという気持ちと、世話から開放される日は来るのかという絶望感の、両方の意味がこめられているように思う。自閉症は目に見えない障害だから、周りの人にもいろいろ迷惑をかけたり誤解されたりして、キョンスクの労苦は想像を絶するものがある。 キョンスクは息子が走っている間だけは、楽しそうにしていることに気づく。ハーフマラソンではなんと3位に入賞。フルマラソンに挑戦させたいと考えたキョンスクは、元ボストンマラソン金メダリスト(イ・ギヨン)に指導を頼む。しかし、熱心な母の姿を見て彼は言う。「自分の意思を言えない子はケガをする。チョウォンにマラソンをさせるのは、母親の“エゴ”ではないのか」と。 母親は、チョウォンがまだ子どものころに動物園で彼の手を離してしまった。チョウォンは迷子になって大変だった。本当はあの時、母親はチョウォンを捨てたのではないか。どうしても育てる自信がなくて・・・。それから母親はチョウォンにべったりの生活になってしまう。なかなかチョウォンの手を離せなくなってしまった。そのためにチョウォンの父親や弟ともうまくやっていけなくなる。 フルマラソンのスタートラインに立つまでには、立ち止まったり、歩いたりの紆余曲折があり、本番のレースでもダウンするシーンも。しかし、チョウォンはみごと完走。ゴール後のメラの前では、これまで人前では見せることができなかった笑顔がこぼれる。キョンスクは、スタートするときにチョウォンの手を離して本当に良かった・・・。 マラソンを走ることで、少しだけ身も心も軽くなり、少しだけ成長もするという話だ。私は、知的障害を抱える青年が出場したマラソンレースを何度かサポートさせてもらったことがある。完走を体験することによって少しだけ自信をつけたかな、と実感できたときはわがことのように喜んだことを覚えている。この次は、「手を離して」(サポートなしに)完走できることを楽しみにしている。そんなことを思い出しながらスクリーンに見入っていた。ピアノのテーマ音楽も俊逸だった。 ▲
by hasiru123
| 2005-09-17 14:48
| その他
2005年 09月 11日
トレーニング効果を考える -その1-
ドイツの19世紀の有機化学者リービッヒは、「植物の生育には窒素(N)・リン(P)・カリウム(K)をはじめとする様々な微量元素が必要だが,これらの栄養素の内の最も少ない栄養素が生育を支配する」ことを発見しました。植物の生育は最も不足する栄養分に左右されるため,最も不足する栄養分を十分に施さない限り他の養分を施しても植物の収量はよくならない、と。さらにリービッヒはその考え方を、複雑な栄養素が混在している食品の中で、何が最もその食品の栄養価を決定するかという問題に発展させて、桶に水を入れたときの貯水量を例にして、最小律の考え方を説明しました。 アミノ酸の中には、人の体内で合成されないためにどうしても食品として摂取しなければならないものがあって、これを「必須アミノ酸」(注1)と呼びます。食品中の必須アミノ酸の組成は人が要求する量とは異なっていて、他のアミノ酸が充足率を満たしていたとしても、1つでも低いアミノ酸があれば、必須アミノ酸は低いアミノ酸のレベルまでしか補給されたことにならないというのです。すなわち栄養価は、充足率の最低の成分によって決まるというわけです。 たとえば下図(注2)を見てください。板の長さがそろっていない桶があって、そこに水を入れたとします。桶の板を必須アミノ酸の必要量とし,桶の中の水の量を食品から補給されたアミノ酸量とすると,その水の量は一番低い桶の板によって決まります。桶の板が一番長いところでそろうのが理想的で、この場合水は満タン(各必須アミノ酸が100%充足)になりますが、板の長さに大小があれば、水は最低の板の長さの水位にとどまります。そこで、われわれはいろいろなアミノ酸を含む食品をあわせて食べることで、この最低水位を補完しあって、高い栄養を摂取するように努めるわけです。これが最小律の考え方です。 ![]() 前置きが長くなりましたが、ランナーが高いトレーニング効果を得ようとするときも、この最小律の考え方がぴったり当てはまります。 時間とエネルギーといくばくかのコストを投じて行ったトレーニングが、効率よく身についたかどうかというのがキーポイントです。大掴みにいうと、次の3つのポイントにおいて、それぞれがとれだけ充実していてかつ(1)~(3)がバランスよく取れているかどうかということにつきます。 (1)練習内容(量、質、方法など) (2)ふだんの生活(食事・睡眠など) (3)アフターケア(ストレッチ、入浴、マッサージ、ウエイトトレーニングなど) (1)の練習内容は、走力を養う重要な要素であることはいうまでもありません。(2)が欠けると、せっかく行ったトレーニングが消化不良を起こしかねません。また、(3)が足りないと、故障につながる危険をはらみます。(1)~(3)のどれも不可欠ですので、1日の中で、あるいは1週間、1ヶ月間の中で過不足なくバランスの取れた配分が必要です。 この3つの中で、大方のランナーが最も重視するポイントは(1)ではないかと思います。つづいて(2)、そして一番後回しになるのは(3)かもしれません。しかし、そのどれもがとても大切なのです。年齢や職場環境、走暦、走力、身体コンディション、目標などによりウエイトの置き方は個人差があります。しかし、(1)を最大限生かすためには、(2)と(3)を積極的にかつ計画的に取り入れることが肝要だと思います。さきほどの樽の図をもう一度見てください。仮に(1)~(3)を樽の板に例えるならば、(1)の板がどんなに長いとしても、(2)か(3)が短ければ、その長さの水位しか樽の水は確保できないのです。つまり、せっかく行ったトレーニングが十分に生かされないことになります。 (注1)たんぱく質を構成する必須アミノ酸には次の9つある。 イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェルニアラニン、スレオニン、バリン、 ヒスチジン (注2)化学物質リスク管理研究センターのホームページから引用させていただきました。 (http://unit.aist.go.jp/crm/directors_address_2003j.htm) ▲
by hasiru123
| 2005-09-11 20:19
| 練習
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